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今日の絵(その34)

2012年05月11日

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「トッコちゃん、ごめん、母さん急いであと6枚ワンピース縫い上げなくちゃならなくなっちゃった。お得意さんからの注文なのでどうしても断れないの...だから明日はひとりでおばあちゃんちに行ってね」
と縫子やってる母さんに云われ初めて付き添いなしで特急電車に乗ることになったトッコちゃん。
隣の席には髪の毛がテカテカ光って変な臭い(母さんがポマードっていう男の化粧品だと言ってた)のする、大きな中年のおじさん。
しかもキツネ色の三つ揃いなんか着て、あちこちすり切れたねずみ色の大きな革の鞄を抱えてる。
挨拶しても知らん顔だし、ぶつぶつ独り言ってるし、とっても怪しい...
ガタンゴトンと電車が走り出すなり、トッコは不安になる。

それで父さんがいつかフィンランドから持って帰ってきてくれた森の精霊のお守りを手にぎゅっと握りしめた。
「こんな時は、楽しいこと考えよう。えっと、そうだ、おばあちゃんちのミー介のことがいい。あと一時間半くらいで会えるのよ。私のこと憶えてくれてるかしら...すぐに機嫌良く撫でさせてくれるかなあ...白くまアイス一緒に食べたいなぁ...」

と、そんな風にミー介のこと考えてたらトッコちゃん不安な気持ちはどこへやら、すっかり心和らいで、ぐーすか眠ってしまいます。
(昨夜は興奮してなかなか眠れなかった)
しばらくして目が覚めると、傍らにポマード男はおらず、代わりにおかっぱ頭で、痩せて肌が見たことないくらい白い女の人が座ってました。
「お嬢さんお目覚め?スヤスヤよく眠ってたわね...ところでどこまで行くの?」
トッコがまだしっかり開かぬ眼をこすりながら行き先を告げると、
「あら、その駅だったらもうとうに過ぎたわよ」

ががががーん!!!

しかも、のけぞった拍子に見上げるとなんと荷物棚に置いといた黄色いリュックが消えている。
「やはりあのポマード男は盗っ人野郎だったかーっ!」
「あわわわ、わたしどうしよう...」

と、こんな具合にトッコ10歳、その長い夏休みが始まったのでした。

(今回の曲)
早川義夫+佐久間正英+HONZI 「猫のミータン」

ジャックスと四人囃子とフィッシュマンズの合体技、うう...

azisakakoji

 
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