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夜舟 個展 「早春賦」

2016年03月27日

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むかし、まだベルギーに住んでた時分、年に一回帰国して主に福岡で個展をやっていた。
ある夏は(当時は個展というものは夏にやるものだと思ってた)、知り合いのデザイン事務所の待合室の真ん中に四畳半くらいの箱を作って、その中に作品を展示した。
いつもはアクリル画なんだけど、どういう風のふきまわしか、そのときはパソコンで描いて出力したデジタルイラストの作品だった。
初日だったか最終日に、デザイン事務所の人が近くのイタリア料理屋さんを貸し切り飲み会をやってくれた。
50人くらいが集まり酔っ払いおしゃべりし、とってもがやがやしてた。
誰かと立ち話しててコップ空になっちゃったので、手直にあったワインのボトルに手を伸ばそうとしてふと見たら、知らない女の子がソファーに一人ぽつんと物言わずに座っていた。
そこだけ、しんと静かだった。

「よお、飲まんと?」
「あ、あたし飲めないんです」
「そうなん、じゃあどすばす食べりいよ」
「あ、はい」
「何しよるん?人生の中では主に何しよるん?」
「あ、絵をちょっと...」
「おお、そうなん!なんか、持っとる?写真とか...」
「あ、はい、絵葉書...」
「おお、見せりいよ、見せりいよ」
「あ、はい」

手に取って見た。
パーティのがやがやした世界がすうっとかき消えて、別の世界が眼前に立ち現われた。
つまり彼女は独自の世界を持っていた。

こういう仕事をしていると、「わたしイラスト描いてるんです、見てもらえますか」といった感じの人たちが少なからず訪ねてくる。
見るとそれは良かったり悪かったり売れそうだったり売れなさそうだったりするんだけど(ここんとこ、じつに偉そうですまん...)、彼女の絵は、とてもとても良かった。
しかし、良すぎて、”イラスト”としてはあんまし売れなさそうだった。
つまり、企業の広告や宣伝のために用いるのには個性が強すぎた、美しすぎた。

そんなわけで、なかなか絵だけで生きていくにはしんどいだろうなあ...と思った。
けれど、絵だけで生きていくのはしんどいのはお互い様だ、それしかできないんだからしょうがない。
「おお、わが同志よ!」
と、そう思った。
それから10数年たったけど今も相変わらずその思いは続いている。

彼女、夜舟(ペンネームです)は、何年か前、マンションの一室を借り女手ひとつで自分の小さな画廊をはじめた。
亞廊というのがその名前だ。
主に自分の好きな作家の企画展を開いたり、集めた古本や骨董や作家もののグッズを売ったりした。

さて、この亞廊、がんばって続けていたんだけど、諸事情でこの春、店じまいをすることになった。
(実店舗は閉めちゃうけど、”亞廊”自体は場所を変えて継続!)
昨日26日からは、この場所の最後を飾るべく、彼女がここ数年描きためた作品の個展が行われている。
たくさんあって、見応え十分だ。
「ええっ、こんな素敵なものを、こんな値段で売ってるんかい?」
と憤りたくなるくらい手頃な価格がついている。
できれば原画を手にいれ部屋に飾ってほしい。
(我が家にも数点飾ってある)
さもなくば絵葉書やポチ袋などのグッズもちらほらあります。

ぜひ、行ってみてください。
西鉄大牟田線の薬院駅から歩いてすぐです。

夜舟 個展 「早春賦」
2016年3月26(土)~4月10日(日)
期間中の金土日月曜に開催 入場無料
営業時間 13:00~19:00(月曜のみ17時閉店)

ギャラリィ亞廊
〒810-0014 福岡市中央区平尾1-4-7 土橋ビル307
http://gallery-arou.com
■お問い合わせ tel・fax 092-523-7736 / mail info@gallery-arou.com
※お問い合わせへの回答などは営業日に行います。


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