« 2016年07月 | メイン | 2016年09月 »

マンガ傑作選 その142

2016年08月21日

webnewmachi53.jpg

投稿者 azisaka : 09:06

「英国から考える、沈む国・日本」

2016年08月06日

webmp.jpg

1年半くらい前のこと、「ちょっと会って話がしたいんですけど」と連絡があったので待ち合わせ場所に行ってみたら、初めて会うその男は同い年の大柄なロン毛野郎で細身のパンツにドクターマーチン、でかい指輪はめて、とっても礼儀正しかった。
高校の時、先輩に連れて行かれたスターリンのライブにやられちまってからの図太く強靭な筋金入ったパンク野郎で、本を売ることを職業としていた。
なかなか気が合ってすぐさま一緒に仕事をすることになったんだけど、そんな彼が会った当初から、「この人の文章、すっごくいいんですよね、俺、大好きなんす」って事あるごとに言ってたのが、同じく心根がパンクなブレイディみかこさんだ。
試しに読んでみた。
確かにいい、例えばこんな感じだ。

「ボウイが死んだ」
「は? ボウイって誰?」
そんな変な名前の友人が連合いにいたっけ?と思った。最近やけに死ぬ人が多いので、また誰か逝ったのかと思ったのだ。
「ボウイだよ、デヴィッド・ボウイ」
と言って、連合いは電話口で”Space Oddity”を歌いだした。
「えっ」
と驚いて「いつ?」と訊くと
「いまラジオで言っている。公式発表だって」
と連合いが言った。
 頭がぼんやりしていた。意味もなく、いまUKで連合いのように“Space Oddity”を歌っている人が何人いるのだろうと思った。
 以前も書いたことがあるが、わたしはボウイのファンではない。そもそもロックスタアの逆張りとして登場したジョニー・ロットンを生涯の師と定めた女である。だから彼の音楽も「まあ一通り」的な聴き方をした程度だし、同世代の女性たちのように麗しのボウイ様に憧れた思い出もない。
 寧ろ、彼の音楽に本格的に何かを感じ始めたのは前作の『The Next Day』からである。
アンチエイジングにしゃかりきになっているロックスタアたちへの逆張りを、誰よりもロックスタアだったボウイが始めたように感じたからだ。
 彼は老いることそのものをロックにしようとしていると思った。
 絶対にロックにはなり得ないものをロックにしようとする果敢さと、その方法論の聡明さにわたしは打たれた。だからこそ、2013年以降は
「いま一番ロックなのはボウイだ」
と酒の席で言い続けてきたのだ。
 権力を倒せだの俺は反逆者だの戦争反対だのセックスしてえだの、そういう言葉がロックという様式芸能の中の、まるで歌舞伎の「絶景かな、絶景かな」みたいな文句になり、スーパーのロック売り場に行儀よく並べられて販売されているときに、ボウイは「老齢化」という先進国の誰もがまだしっかり目を見開いて直視することができないホラーな真実を、ひとり目を逸らさずに見据えている。そんな気がしたのである。
 しかもまたボウイときたら、それをクールに行うことができた。
 新譜収録の〝Lazarus”のPVの死相漂うボウイの格好良さはどうだろう。
 プロデューサーのトニー・ヴィスコンティは「彼の死は、彼の人生と何ら変わりなかった。それはアートワークだった」と語っているが、ボウイは自らの死期を知っていて、別れの挨拶として新譜を作ったという。リリースのタイミングも何もかも、すべてが綿密に計画されたものだった。
 思えば2年前。クール。というある世代まではどんなものより大事だったコンセプトを復権させるためにボウイは戻って来たのではなかったか。
 そのコンセプトというか美意識がずぶずぶといい加減に溶け出してから、世の中はずいぶんと醜悪で愚かしい場所になってしまったから。
 ボウイのクールとは、邦訳すれば矜持のことだった。
 「英国に止まらない雨が降った朝」(ele-king )より抜粋。

さて、そんなブレイディみかこさんは伊藤野枝と同じ福岡は今宿出身、今月、冒頭で紹介した男の本屋でトークショーをやることになった。
上に掲げたのがそのポスターだ。
話し相手は森元斎で、詳細は以下の通りです。
万象繰り合わせまくってぜひ!
(つうか残席わずか!)

ブレイディみかこ氏ライブトーク
「英国から考える、沈む国・日本」
 社会保障の削減。雇用の悪化。貧困の拡大。日本でも、英国でも、若者や労働者たちはもはや未来を信じられなくなっている。海を越えて同じ問題に直面している二つの国。だが、英国では人々が切実な怒りを突き上げる政治的な動きがある。一方、日本はどうか。ことによれば、日本のほうが英国よりも破滅的な状況なのかもしれない……
 英国に20年暮らし、欧州の政治状況を綴った『ヨーロッパ・コーリング』(岩波書店)と日本取材記『沈む国の幸福な日本人』(太田出版)を上梓されたブレイディみかこさんが、東京よりも隣国を近くに望む故郷・福岡で、「地べた」「下」から見た英国と日本の今を語る。

日時:8月20日(土曜日)18:00~20:00
場所:福岡パルコ新館6Fタマリバ6(フタバ図書隣)
聞き手:森元斎氏(九州産業大学非常勤講師・哲学史研究)
参加方法:無料。フタバ図書福岡パルコ新館店に電話で、または直接お申込み下さい(定員に達し次第締切)
ご予約・お問い合わせ:フタバ図書福岡パルコ新館店(電話092-235-7488)

<プロフィール>
■ブレイディみかこ(ぶれいでぃ みかこ) 
1965年、福岡県福岡市生まれ。1996年から英国ブライトン在住。保育士、ライター。著書に『花の命はノー・フューチャー』(碧天舎)、ele-king連載中の同名コラムから生まれた『アナキズム・イン・ザ・UK ――壊れた英国とパンク保育士奮闘記』(Pヴァイン)、『ザ・レフト─UK左翼セレブ列伝 』(Pヴァイン)がある。
The Brady Blog HYPERLINK "http://blog.livedoor.jp/mikako0607jp/"http://blog.livedoor.jp/mikako0607jp/
Yahoo!ニュース個人 ブレイディみかこ
 HYPERLINK "http://bylines.news.yahoo.co.jp/bradymikako/"http://bylines.news.yahoo.co.jp/bradymikako/

■森元斎(もり もとなお)
九州産業大学・龍谷大学非常勤講師。専攻:哲学、思想史。1983年東京生まれ。中央大学文学部卒業、大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)
著書に『具体性の哲学 ホワイトヘッドの知恵・生命・社会への思考』(以文社)

投稿者 azisaka : 06:34