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ウラジーミル・キャロット
2016年10月16日
あ、みょん子ちゃん、何してんの?
見りゃわかるでしょ、じゃましないでよね
じゃまするつもりなんてこれっぽっちもないよ。ただ、いったい何やってんのかなぁ、って思って...
ったく、よく見なさいよ、あんたの目はどこについてんの、お尻にでもついてんじゃない?
ううん、ちゃんとおでこの下、鼻の両脇に2個ついてる
だったらその2個の目でしっかり、あたしのやってること見てごらんなさいよ
あ、あの、すみません、それじゃあこの目隠し取ってくれませんか?
わあ、そうだった、うっかり自分のやってることに夢中で、あんたに目隠しして縄で縛って、モミの木の根っこに括り付けてたのをすっかり忘れちゃってたわ
モミの木?
ええ、モミの木よ
ぼく、これカシの木かと思ってた
あら、どうして?
だって、なんとなくカシカシしてて、モミモミっていう感じじゃなかったから...
そうかあ、モミの木だったのかぁ...ん、モミの木?
さてはみょん子ちゃん、クリスマスツリーを作ってたんじゃない?
ふう...何言ってんのよ、今は10月。クリスマスにはまだまだ早いわ...
あんたねぇ...いくら仕事が忙しいからって季節の移り変わりに鈍感なようじゃ、生き生きとした人生なんておくれないわよ。
だから、ごらんなさいよ。いざっていうときに踏ん張りがきかなくてさ、あたしみたいな女の子に簡単に叩き伏せられちゃって、おまけに3日間も木の根っこに縛りつけられたりすんのよっ
ええっ、もう三日もこうしてたのかあ...どおりでお腹がすくわけだぁ...
ああ、お腹すいたなあ...
ふう...まったくあんたって...季節はおろか日々の移ろいにも鈍感なのね...
というか、あきれてしまうのは、そんなに腹ペコなのに、この臭いが気にならないの?
こーんなに美味しそうな臭いが、3日前からずーっと辺りにたちこめてんのに、あんた何にも感じないの?
だ、だってみょん子ちゃん、鼻栓が...
ぼく鼻栓かまされちゃってる。
そんなわけで、ずっと口だけで呼吸してる...はぁはぁはぁ...
もうっ!そんな鼻栓なんて、「ふんっ」って強く鼻息吐いて、ぶっ飛ばしてしまいなさいよ!
だ、だって、そんなことしたら鼻汁もいっしょに飛び出しちゃって、大切なシャツ汚してしまうじゃないか。
君が去年のクリスマスにプレゼントしてくれたタータンチェックのネルシャツ...ぼくの一番のお気に入り...
去年じゃなくて、一昨年よ
一昨年...え、そうだったっけ?
時の経つのは早いもんだなぁ...
と、ともかく、大切なシャツだから汚したくないんだ
いいわよ、汚して。
あたし洗ったげる
ああ、みょん子ちゃんって、いつも優しい...
よぉし...
ふんっ!
ぴゅーん
ぽちゃん...
あーっ、にんじんスープの中に落ちちゃったーっ
おお、にんじんスープの臭いが!
ぼく、にんじんスープ大好き!
まあ、ふつうそうよね...あんたウサギなんだから
えーっ、ウサギーっ!!
おれってウサギだったのかーっ!
そうよ、ウサギの黒龍丸よ
こ、こくりゅうまるぅ...
や、やだよぉ...そんな闘犬みたいな荒々しい名前...
も、もっと、可愛らしい名前がいい
あら、そおぉ?
んっと...じゃあ、メアリー!
それ、西洋の女の名前だろ?
おれ日本男子だぜっ
...じゃあ、信長は?
だからぁ...もうっ...
みょん子ちゃん、ぜんぜんわかってない。
しょうがない、ぼくの希望、箇条書きにするから、しっかり読んでよ
1)可愛らしい名前
2)男らしい名前
3)うさぎらしい名前
うん、しっかり読んだ
で?
うん、そうねぇ...
キャロット...
キャロットはどう!
おお、いい!
ウラジーミル・キャロットよ!
え?
ウラジーミル...?
キャロットっていう名前は素敵だけど...
その、ウラジーミルってロシア風の苗字は一体...?
あら、あなたのお父さんはロシア人じゃない?
たしか、お母さんは青森出身の日本人、お父さんはミンスク出身のロシア人のはずよ
えーっ、知らんかったーっ!
だからぼくって毛深いんだぁ
そ、それは、ちょっと見当はずれのような気がするけど...
まあ、いいわ...
はいスープ
ズズッ...
う、うまーっ!
みょん子ちゃん、料理じょうずーっ!
ぼくみょん子ちゃん、大好き!
ありがと