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描き直し

2017年04月29日

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世の中がざわついてる時(オリンピックとかクリスマスとかGWとか)はなるだけ外へは出ず、自分の家にとどまって淡々と仕事をする、っていうのを日頃から心がけてるおかげで、今年のGWは外出せねばならぬ用事が見事にひとつもない。
ありがたいことだ。

幸い昨日で福岡での個展が終わり、手元に、展示してた48枚の絵が戻ってきた。
長崎での個展が始まる12日まで、気に入らないところをばりばり描き直すことにした。

今回の個展期間中、会場に行って壁にかかってる絵を垣間見るにつけ「ああ、あの時はなんでこんな風に描いてしまったんやろう...ここら辺早く描き直したいなあ...」と、うずうずそわそわやきもきズキズキしてた気持ちがやっと諌められる時がきた。

さて、やったことない人には、この作業がどれほど心地いいものかを説明するのは難しい。
それは例えるなら、”手足縛られ自由が効かないのにおでこ蚊に刺されかゆくてたまらないのを我慢してると助けが来てロープほどかれ思いっきりおでこをかきむしる”、そんな時感じる心地よさだ。

あるいは、汗水垂らし一日中野良仕事して我が家へ帰り熱い湯船に身を浸したときの「ああ〜」という心地よさや、その後冷えたビール飲んで「くう〜」となる心地よさにも似ている。

さらには悪い親分の非道に耐えに耐えた健さんがついに殴り込みに行き、長ドスで手下どもをばっさばっさと切り倒すときの心地よさにも似ているという気もする。

とにかく、それをやると気が晴れる。
スカーっとするのだ。
ある種のカタルシスといえるのかもしれない。

さて目の前に48枚の絵をずらっと並べる。
手当たり次第、気に入らないとこをかたっぱしから描き直していく。
うう、楽しい...
家内行楽だ。
ただここでひとつ注意しないといけないのは、そのうち何枚かはすでに(幸いなことに)引き取り手が決まってるということだ。
人手に渡っているものを勝手に描き直すことはできない。
したがって、この場合は心がうずいても我慢して、泣く泣く見て見ぬふりをする。

と、まあそんなわけなので今回の個展、福岡と長崎で展示作品は同じだけど、そのうちの少なからずが人物の仕草や表情、背景の色合いなんかが微妙に異なることになる。
それは例えば、上に三通り掲げてあるような変化だ。
でも絵を見る人は、どっちが描き直す前で、どっちが描き直した後かなんてあんましわかんないと思う。
大勢の人にとって、あるいは”芸術的”には、前の方が良かったってこともあるだろう。
描き直すのは、改善より改悪であることも多々あるだろう。
でも、そんなのはおかまいなしだ。
だって普段から別に”芸術(アート)”やってる気なんてあんまししない。
絵を描くのはただひとり自分がスカーっとしたいからだ、楽しみたいからだ。
(あ、ここ、ちょっとかっこつけてすまん)

ともかく、こんな具合に自分勝手やりたい放題、自由気ままに絵を描くことができるっていうのはそれだけで、まるでこの世界の王になったような気分だ。
けど同時に、そうせざるを得ない、そうしてないと心穏やかでいられないっていうのは、自由を奪われ服従させられてるようで、まるで誰かの奴隷になったような気分でもある。
絵を描く人は、王様と奴隷を同時にやってるようなもんだ。

さて話変わって、今回の個展について、ドイツ語とドイツ文学と創作料理とものまね歌謡が専門の堺さんがいかした文章を書いてくださいました。
マリアンヌの絵をしっかり見てくださっててひどくありがたかったです。

コラム錆猫洞

azisakakoji

 
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