« 今日の絵(その9) | メイン | 今日の絵(その11) »
今日の絵(その10)
2012年02月20日
君は中3の男の子だ。
瀬戸内海に面した小さな街に両親と妹の4人で暮らしてる。
家はなかなか貧しくて、家計を補うため新聞配達の仕事をしている。
毎日毎日、陽の明けぬうちに起き、50件ほどに配って回る。
さて、そのうちのひとつに、それはそれは立派なお屋敷がある。
自分の身の丈の2倍くらいありそうな門戸、その右手に一文字の錆びた口が開いてて、君は毎朝そこに新聞をねじりこむ。
(寝たきりじいちゃんに無理にご飯食べさせてるみたい)
口の奥はどんな風になってるんだろうかと思うけど、高い塀に囲まれて中の様子はまったくわからず、遠目に洋風の屋根の先っちょが少しばかり見えるだけだ。
ある日のこと、学校が終わるやいなや足早に帰ってると(家の仕事の手伝いをするのだ)、いつも固く閉ざされているはずのお屋敷の門、分厚い扉がほんの少し開いてる。
あ、開いてる!
入れる!
しかし、
早く帰らなきゃ、父親にどやされる。
どやされて身をすくめる自分の姿が脳裏にありありと浮かぶ。
浮かぶが、好奇心がそれを一拭きで消し去ってしまう。
気付いた時には、すでに塀の内側、変な形の葉っぱのしげみの横に突っ立っていた。
(つうかふつう親父より、屋敷の人に怒られるのを心配するやろ...)
ぱちくり眼を動かし前方に焦点を合わせる。
うっひゃーっ。
こっ、これが、”クラッシック”かあーっ!
(えっ?)
音楽室でシューなんとかとか、モーなんとかとかいう昔の西洋の人が作った曲を聞かされるとき、閉じたまぶたの裏にぼんやりと映る風景があるのだが、それが今、ぱっきり高解像度で現われた。
(実は君は、クラシック音楽聞いてるとき、妹の少女マンガ(キャンディ・キャンディとか一昔前の)で見た風景を思い出してたわけなんだけどね...)
芝生、噴水、ベンチ、薔薇なんかのとにかくきれいな花々...
嗚呼...
(君は自分の”ああ”もいつの間にかクラッシックになってるので、ちょっと驚く)
感嘆の声をはきながら、夢見心地でふらふらとそんな庭園の中をさまよい歩く。
しばらく歩いてたら、のどか乾いたので、噴水に口をつける。
いつもは両手ぶらりなのだが、今は王侯貴族みたいに蛇口のとこに手を添えている。
と、うしろの方で、かさっと枝葉のすれあう音がした。
君ははっと振り向く。
女の人が立っている。
君を見ている。
と、いう感じの絵です、今回の絵は。(笑)
でもって君は、あわてて自分ちに逃げ帰るんだけど、
その時、流れてくるのがこんな曲だ。