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錆猫四天王その1

2013年03月29日

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前回登場の”大学でドイツ語教えてる友人”が、絵箱展について某ブログにいかした文章を書いてくれてました。
ここに紹介いたします。
(いいですよねっ?)

「絵箱の誘惑」
太古のむかしからひとは誘惑にかられて、「神々がしてはならぬと言った」と伝え聞いたことを敢えてなしてきた。罪の歴史記述はそこに始まる。パンドーラーに贈られたのは箱であったとも壺であったとも伝えられるが、中に入れられたものはこぼれてはならないものであり、他のものとは区別された特別なものであった。そしてそのうえ、蓋をして遮蔽するのは、常に開いた器とはちがって、開くこともできるという可能性の点で、外界との隔絶を一層深く表現する。誘惑の秘密はそこにある。箱は閉められている以上、雄弁に外界との隔絶を語るのだから。
 古来箱には装飾が施されてきた。隔絶を語りながらも、その美しさは一層、内部への好奇を誘うのである。それが箱の中に何かを隠した神々のいたずらであるにせよ、神々を真似た人間の行為であるにせよ、箱はひとを惑わしてきた。
 箱に描かれた多くは女人である。その波打つ髪は神話から時を越えてやって来たかのようである。波に揺らめいても揺るぎなく己の姿を見つめつづけて花と化した少年のように、箱の秘密を窺う者を見つめつづける。
 誘惑に導かれ蓋を開け、中身を取り出すというきわめて人間的な行為と、中に詰め込み蓋をして秘密を作るという神的な行為とを私たちに誘い強いる絵箱そのものこそ、私たちに与えられた宝ものなのかもしれない。
 わがこころなぜか波打ちさざめきぬ。

(「コラム錆猫洞」より)

azisakakoji

 
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