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マンガ傑作選その111

2014年01月04日

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ここ10年ばかり、年末年始は実家で両親と静かに過ごすことにしている。
(20代に放蕩しまくったことへのつぐないだ)

毎年のことなんだけど、彼らは、紅白だとか箱根駅伝だとかテレビを見たいが、こっちはテレビなど見たくない。
(一般の人にはわかりずらいだろうけど、すごくテレビが苦手だ)
正月は、この正月のため、読みたいのをずっと我慢してとっておいた本を読みたい。
しかし、めったにない親子水入らず...自分ひとりだけ2階にあがって読書するのも無粋なはなしだ。

父母とはできるだけ時間を共有したい。
が、本は読みたい。
正月休みの時間は限られている。

といういうわけで、居間で彼らとテレビを見ながら、本を読む、という厄介な作業を強いられることになる。
(つうか、おまえ自身の人柄が厄介なんやろう...)

「森進一は今年もまた”襟裳岬”ば歌いよらすよー」
「ああ、そうやねえ...でもやっぱりいい歌やねー」

「あーっ、この黒人の人、足ばくじいとらすごたる、棄権さすよ、かわいそかねー」
「ああ、そりゃあ、しんどかねー」

と、こんな感じの会話をしつつ、本を読む。

今回、とびきり面白かった本はというと、夢野久作の「近世快人伝」だ。
博多の葦書房という出版社が20年ほど前、その創立25周年を記念して復刻した非売品だ。
数年前手に入れたんだけど、すぐに読むのもったいないので、ずうっと我慢してとっといた。

まえがきからしてすでに傑作だ...

「筆者の記憶に残っている変った人物を挙げよ...と云う当代一流の尖端雑誌新青年子の注文である。もちろん新青年の事だから、郵便切手に残るやうな英傑の立志談でもあるまいし、神経衰弱式な忠臣孝子の列伝でもあるまいと思って、成る可く若い人達のお手本になりさうにない、処世方針の参考になんか絶対になりっこない奇人快人の露店を披(ひら)くことにした...」

これ読んで、がはははは...と笑ってしまった。
初笑いだ。

この本を読み終わったら、明治の人の気風にもっと触れていたくなり、押し入れの段ボールの中からむかし読んだ森銑三の「明治人物夜話」を引っぱりだしてきた。
読み進めてしばらくすると、正岡子規がその亡くなる前年の正月に病床で詠んだという一句があらわれた。

「大晦日愚なり元旦なほ愚なり」

これ読んで、ガツンと脳天を打たれてしまった。
初ガツンだ。

もうじき死ぬとわかっていながら、なおも成長しよう、その道を極めよう、としてるとこがすごいですよね。


azisakakoji

 
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