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今日の絵、その30
2013年12月27日
あれ、カトちゃん、何してるのさ?
もお、あたしのことカトちゃんって呼ばないでよ
だって、君の名前カトリーヌだろ、カトちゃんで合ってんじゃん
ふう、しょうがない人ね...
で、何やってんのさ?
どの果物食べようか考えてたの
えーっ、うそだーっ
林檎にしようか葡萄にしようかって考えてるような顔つきじゃないよ、
何かこう、もっと深刻なことを悩んでるような...
え、何、つまりこういうこと?
果物ってのは悩むに値しない、つまらないものだってこと?
えっ、そういうわけじゃあ...
だって、そうじゃない、あなたの言い方だと、誰だってそう受け取るわ。
ことの重大さがわかってないのよ、果物がこの世界からなくなっちゃったらどうすんの?
あなた今みたいに幸せでいられる?
ううう...すみません
まあ、わかったのならいいわ、その素直さに免じてゆるしてあげる
わあ、よかった、ほっとした...
ところで、矢継ぎ早に質問して恐縮なんだけど...
何よ?
あの、なんでそんな風に、椅子の端っこのほうにちょこんと腰掛けてんの?
ふう...だって壊れちゃうじゃない
え、椅子が?
まったく...あなたって何でも一から十まで説明しないとわからないのね...
私が座ってる椅子の、赤いクッションみたいな部分があるでしょ
うん
これ、クッションじゃなくてマカロンなのよね
えーっ
無花果味よ
なんだあ、だから壊れないようにそうっと座ってたのかあ...
でも、作るの難しかっただろうなあ...
うん、そう...
まず今の時期、大量の無花果を手に入れるのが大変だったわ
無花果じゃなくて林檎とか蜜柑にすればよかったのにさ
まあ、それじゃあ、きれいな紅色が出ないじゃない
ああ、そうか発色が大切だったんだね
というより、やっぱり味ね、あたし無花果が一番好き...
あ、なんだやっぱりそうか、ぼくも実はそうにらんでた
で、ね、つぎに大変だったのがマカロンを焼く鉄板...
ああ、普通のフライパンとかじゃあ大きさがぜんぜん足りないだろうからねえ...
うん、よくよく考えた末に、むかしお好み焼き屋さんをやってた、和恵おばちゃんのこと思い出したのよ
あー、お好み焼き用の鉄板は大きいもんなあ
ええ、それで借りにいったのはいいんだけど...
うん、うん
ソースがこびり付いてて、これがなかなかとれないのよねえ...
あー、呼んでくれれば手伝ってあげたのに、そりゃあ大変だったなあ...
うん...でもどうにかこうにか鉄板ピカピカにして、うまく焼くことができたの。
丸い形じゃなくて四角にするのにも相当骨が折れたんだけど...そのいきさつはまた今度ゆっくり話すわね...
うん、楽しみにしてる。
ともかく、うまく出来上がってよかったねえ、さぞかし満足感があっただろうなあ...
ええ、とっても...でもね、それからがまた一苦労だったのよ
うん、うん
そのマカロンを椅子のクッションにするには、ただぽんと足の部分に乗せりゃあいいってもんじゃないじゃない
うん、うん
背もたれのとこを取り付けるため二カ所ばかり削らなきゃならないんだけど、うまくやらないとひび割れちゃうのよね
うん、うん、マカロンだからね、すぐポロポロって...
そう、すぐにポロポロってなっちゃうのよ...
でもこうして見ても、ちっともヒビとかはいってないや、すごいもんだなあ...見事な技だなあ
ありがとう、そう言ってくれると苦労した甲斐があるってものよ
でもさ、なんでまた、そんなもの作ろうと思ったの?
だって、ぱっと一目見ただけじゃあ、ただの椅子にしか見えないでしょう?
まさか無花果味のマカロンだとは思わないじゃない?
うん、ぜんぜん思わない
でも、言われてみれば、大きくて四角い無花果味のマカロンに見えるでしょう?
うん、見える
そこのとこが、なんか素敵だなあ、一生懸命作ってみる価値があるなあ、ってそう思ったの
なるほどなあ...
いっしょに食べる?
うん、食べる
じゃあ、お茶入れるね
と、そんな感じのカトリーヌさんが、めでたく来年のカレンダーになりました。
わあ、ほしいなあ、と思われた方は熊本のチャイナチャイナというブティックまで行ってみてください。
マカロンとか手みやげに持って行くと、余分があって気分が良ければ多分わけてくれるはずです。
マカロンではなく源氏パイとかギンビスアスパラとかそんなものでもいいと思います。