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マンガ傑作選その117
2014年02月17日
大学4年の頃は古い一軒家に住んでいた。
ある日、同居してたフランス娘がだしぬけに言った。
「来月パリから男友達ふたりがバカンスでやって来るの」
「しばらく家に滞在するみたいなので、よろしくねっ!」
家には来客用の布団がひと組しかなかった。
それで、「ああ、そりゃあ、あとひと組、どっかから借りてこんといかんね」と言うと、
「いいの、彼らカップルだから」と返事をした。
彼らはニコニコやって来て、3週間ばかりいっしょに暮らした。
(フランス人の休暇、長っ...)
こういった類いの二人組と生活を密にすることってそれまではなかったので、なかなか学びが多かった。
学びが多かったっていうか、おかげで、頭がずっと、柔らかくなった。
当時、部活で中国武術をやっていたこともあって、男というのは汗臭くてゴツゴツしててバキバキするものだと思っていた。
それで最初の頃は、目と鼻の先で見つめ合ったり抱き合ったりされるのに閉口した。
でもすぐに慣れちゃって、男が香水つけてナヨナヨしててメロメロするのもいいもんだなあと思うようになった。
彼らといると、男といても女といても決して現れなかったであろう、自分の知らない持ち味というものがでてきた。
「あれ?おれ、こんな具合にも心が動くんだ...こんな風な身振りもできたんだ...へえ...」といった具合だ。
それで、人間の幅というものが、ちょっぴり広がっていくような感じがした。
その数年後、パリに住み始めることになった時、この二人にはよく世話になった。