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ララバイ、その1
2014年03月02日
一日が終わり、寝る時間になったのに、その過ぎつつある日が、「あなた、まだ私としばらく一緒ににいてくれないかしら」と名残を惜しみ離してくれないような時がある。
古いきのうが新しいあしたに嫉妬して、あしたにおれのことを渡すのを拒んでいるのだ。
こっちは眠りたいのに眠ること能わず、なかなか困る。
そんな時は、そんなギザギザハートのきのうをいなし、落ち着かせるために、子守唄を歌うことにしている。
子守唄といっても、絵描きなので歌ではなくて絵だ。
4B鉛筆で気の向くまま、きのうのために、きのうのこころが和らぐまでデッサンをする。
ほとんどが手からでまかせの人物画だ。
そんな人物画が大量にある。
押し入れの中、スケッチブックがうず高く積んである。
捨てるのも何だかしのびないので、出汁とった後の昆布だとかサンドイッチ作った後のパンの耳みたいにとってある。
ときたまパラパラ見返してみると、たいていは寝ぼけたようなしょぼいものばかりだが、たまに「ああ、このコはなんかいいなあ...」というようなやつがある。
「そんなコには代表になってもらって、ブログにのっけてちょっと日の目を見せてやりなさいよ!」
と、声がする。
去って行ったたくさんのきのう達が口をそろえて注文をつけているのだ。
きのうの集まり、過去軍団だ、過去軍団はうるさい。
ああ、そいうえばむかしあった山田太一、鶴田浩二主演のドラマ「男たちの旅路」の第4部第1話は”流氷”というタイトルだった。
特攻帰りの主人公にとって、”流氷”というのは”過去”のことだ。
キラキラと輝いて美しいと同時に、今現在の生活に濃い影を落とし、時に行手を阻むやっかいもの...
ドラマの中、自分を慕う女(桃井かおり)の死をきっかけに北海道は根室に身を隠した主人公、彼を連れ戻しに行く部下の青年(水谷豊)のセリフがいいぞ!
(以下)
「特攻隊で死んだ友達を忘れねえとかなんとか、散々格好いい事言って、それだけで消えちまっていいんですか?・・・・あの頃は純粋だった、生き死にを本気で考えていた、日本を生命をかけてまもる気だったとか、いい事ばっかり並べて、いなくなっちまっていいんですか? そりゃあね、昔の事だから、なつかしくて綺麗に見えるのは仕様がないよ。俺だって、小学校の頃のこと思うと、いまのガキよりもましな暮らしをしてたような気がするもんね。だけど、なつかしいような事言いまくって消えちまっていいのかね」
「戦争にはもっと嫌な事があったと思うね。どうしょうもねえなあ、と思ったこととか、そういう事いっぱいあったと思うね。戦争に反対だなんて、とても言える空気じゃなかったって言ったね。大体反対だなんて思ってもいなかったって言った。いつ頃から、そういう風になって行ったか、俺はとっても聞きたいね。気がついたら、国中が戦争やる気になっていたとかさ、そういう風に、どんな風にしてなって行くのか、そういうこと、司令補まだ、なんにも言わねえじゃねえか」
「どうせ昔のことしゃべるなら、こんな風にいつの間にか人間てのは、戦争する気になって行くんだってところあたりをしゃべって貰いたいね。そうじゃないとよ、俺たち、戦争ってえのは、本当のところ、それほどひどいもんじゃねえのかもしれない、案外、勇ましくて、いい事いっぱいあるのかもしれないなんて、思っちゃうよ。それでもいいんですか? 俺は五十代の人間には責任があると思うね」
(以上)
おっと、話しが逸れちまったぜ...
そんなわけで、
「おお、過去よ、きのう達よ、おまえらがそんなに言うのなら、ひとつやってみようではないか」
と思ってはじめたのがララバイシリーズです。
(いつもながら話しが大げさですまん...)
今回はその第一弾!