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サーカスの娘

2014年06月08日

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親方いきなりいなくなちゃったんで(たぶん前の巡業先で恋仲になった花売の女にそそのかされた)私が団長をやるはめになちゃったんだけどさ、まだ14のあたしなんかにそんな大役つとまるわけないじゃない。
でも、そう何度も言っても、みんな耳を貸さないのよね。
いいやおまえはちっこいけど器がでかい、おれらを統率する力を持ってるって...
あ、みんなっていうわけじゃないや、あたしと同じ日にここにもらわれてきたナターシャだけは反対したわ。
なんでかな?
まあ、いいや。
さて、今日はあたしが団長になってはじめての公演の日なのよ。
あたしは歩き始めたころから親方たちに仕込まれたから、たいていの芸はこなせるの。
けど、いちばん得意なのは空中ブランコとナイフ投げね。
このふたつをいっしょにやるってのが、わたしの芸のクライマックス、言っちゃあなんだけど、この一座の出しもののクライマックスでもあるわ。
どんなのかっていうと、頭上高く吊るされたブランコからブランコへ飛び移るその時に、相方がかかげた的にナイフを命中させるっていうやつよ。
世界は広いけど、できんのはあたしだけ。
ところがさあ、ここ数日、その技がうまく成功しなくなっちゃったのよね。
あたしは団長っていう大役を引受けちゃったわりには体調もいいし、いつも通りやってるはずなんだけど、うまくナイフが的に刺さんないのよ。
一昨日なんか、投げて逸れたナイフが裏方やってたイヴァンの右目に刺さっちゃって、そりゃあ大騒ぎだったわ。
イヴァンは「猛獣使いは片目が似合う」って笑ってたけど、あたし生まれてはじめて落ち込んじゃった...
それで普段はあんまし使わない脳みそ使ってよくよく考えたんだけど、ナイフがうまく刺さんないのはあたしが悪いんじゃなくって、相方、つまりナターシャが悪いんじゃないかって....
彼女がわざと的をずらしてるんじゃないかって...
何でだろう?
ナターシャ、どうしたのかな?

と、心配してるエリアナが今回登場です。


ところで、びっくりだ。
びっくりかつ非常にうれしい。
小川美潮がやってくるからだ。
自分の郷里の行きつけの店にやってくるからだ。
20代の半ばくらいには、ほんとによく彼女のCDを聞いた。
当時はパリに暮らしてて、聞くのはたいていがアフリカやアラブやブラジルなんかの音楽だったけど、その合間、日本語の響きが恋しくなると、聞いた。
聞いて、憩い、まどろんだ、とても心地よかった。
それで、今でもたまにこのCDを聞くと、身体がすーっとパリはベルヴィルの屋根裏部屋に運ばれる。
目には夕日に照らされたサクレクールが映り、耳には階下のポルトガル人のどなり声がこだまし、鼻には中華とインドの料理が混じったような臭いが押し寄せ、肌にはひんやり乾いた風が吹きよせる。

小川美潮ライブ
6月15日の夕方くらいから、
佐世保の「南国食堂地球屋」にて。

小川美潮「窓」


azisakakoji

 
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