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マンガ傑作選その15

2012年10月30日

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「おまえ、水に乗ってすいすい泳ぎよんね」
と、男言葉でその女の体育教師は唐突に云った。
中学2年の時だ。
いつもの強面の男教師が不在で、その日の水泳の授業は彼女が代わりに行っていたのだ。

名前忘れちゃったけど、小柄で陽に焼けプリプリで、赤い水着を着てたのでまるで金太郎みたいだった。

彼女、色気というものほとんどなかったけど、人気があった。
”頼りになる兄貴分”みたいに、正義感が強くて面倒見が良く、さっぱりしていたからだ。

その彼女が名前も知らぬ他所のクラスの男の子をなにげなく褒めた。
男の子はひじょうに嬉しかった。

「おまえ、水に乗ってすいすい泳ぎよんね」という言葉はそれ以来、彼の心の中で小さな灯りみたいに光り続けた。
高校に進学したら、その灯りをただ唯一のよすがとして水泳部に入った。

大会に出てめざましい活躍をするような選手とはなれなかったが、3年間、ただただすいすい泳いでいた。

それから数十年たったけど、今も週に3回泳いでいる。
おそらくそのせいで病気なんてほとんどしないし、メタボみたいなものとも縁遠い。
ご飯も酒もうまいし、なんといっても仕事の集中力が長く続く。

金太郎先生のひとことのおかげだ。

azisakakoji

 
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