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今日の絵(その34)

2014年02月26日

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「ちょいと兄さん、おれの愛車を描いてはくれないかい?」
という連絡があった。
おもしろそうだけど、車の種類にもよるぞ、と思った。
今、作られてるみたいな、どこがバンパーでどれがヘッドライトかわかんないような、のっぺりした車だったあんまし描きたくないよなあ...と思った。

ところがどっこい、あにはからんや、いもうともはからん、
ちちもはからんが、ははははかる、いかした車だった。

それで、トスカーナの丘陵地帯を疾走する姿を描いた。
けど、なんとなくテレビCMみたいでもの足りない。
それで、背景を描きなおしてドクロディアの街並にした。

「おおー、いいですねーっ!」
と、気に入ってもらってよかった。

投稿者 azisaka : 06:55

nuimori

2014年02月24日

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お茶を差し出す右手の袖に、小さな花を見つけた。

「あ、その花の刺繍、かっちょよかね」

「え?あ、これ?」
「うん、破けちゃったけん...修繕...」

「え、修繕って...それ自分でやったん?」

「う、うん、そうだけど...」

「ええーっ!すごいやん、そんなんやれたん!」

「えっ、あ、そう?」
「うん、なんか見よう見まねで...」

「いや、いや、いい、いい、絶対にいい」
「他にないと?刺繍したやつ、見せてみいよ」

「うん、あるよ、大したもんじゃないけど...」

今から6.7年前、旧友の家にあそびに行った時のことだ。
見せてもらった刺繍は、そのほとんどが子供の衣類になされたもので、破けたとこの修繕や、味気ない無地の布地にワンポイント付け加えたものだった。
それらは色とりどりの糸でとても緻密に丁寧に縫われていて、小さいながらも確固とした存在感があった。

「刺繍、すっごっく、いいけん、もう少し大きなものをいくつかやってみなよ」

「ええ、ああ、そうかなあ...そう?」

「うん、そうそう、やってみいよ、やってみいよ」

「あ、じゃあいくつかやってみるけん」

しばらくして、見せてもらったやつをみて、びっくり仰天した。
それで、さっそく知り合いの雑貨屋さんに持って行ったら、そこの主人も「わあ、いいっ!」と感嘆した。

いくつか店においてみたら、同様に「わあ、素敵だなあ...」っていうお客さんたくさんいて、すぐに売れてしまった。

「ああ、あたしの刺繍を手にしてよろこんでくれる人がけっこういるんだあ...うれしいなあ...」

と、そんな流れで、いつのまにやら刺繍するのが生活の重要な要素になっちまったのが、森さんちのひとみちゃんで、作家名は「nuimori」(ヌイモリ)だ。

その彼女の初めての個展が、今週末から熊本で始まります。
見に行って、手に取って、「わあ...」と、身体の温度が3度くらいあがること間違いないです。
遠方の方もわざわざ行って、けして後悔はしないと思います。
ぎゅうううっと、力強く縫われた草花は、時ににしゃんと立ち、時にぐねりとうごめき、時にぱあっっと華やいで、触れるものの心をゆさぶります。

nuimori
くしゅバック展 「春・夏・秋・冬」

2014年3月1日(土)~9日(日)
12:00~20:00
作家在店日 3月1日、2日

(場所)
orange
熊本市中央区新市街6-22
096-355-1276

(一日刺繍教室)
「パンダ袋をつくりましょう」
3月1日(土)
13:00〜15:30 orqnge(要予約)
¥3.000(お茶付)
持ち物:はさみ

投稿者 azisaka : 09:26

マンガ傑作選その118

2014年02月22日

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投稿者 azisaka : 08:41

マンガ傑作選その117

2014年02月17日

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大学4年の頃は古い一軒家に住んでいた。
ある日、同居してたフランス娘がだしぬけに言った。
「来月パリから男友達ふたりがバカンスでやって来るの」
「しばらく家に滞在するみたいなので、よろしくねっ!」

家には来客用の布団がひと組しかなかった。
それで、「ああ、そりゃあ、あとひと組、どっかから借りてこんといかんね」と言うと、
「いいの、彼らカップルだから」と返事をした。

彼らはニコニコやって来て、3週間ばかりいっしょに暮らした。
(フランス人の休暇、長っ...)
こういった類いの二人組と生活を密にすることってそれまではなかったので、なかなか学びが多かった。
学びが多かったっていうか、おかげで、頭がずっと、柔らかくなった。

当時、部活で中国武術をやっていたこともあって、男というのは汗臭くてゴツゴツしててバキバキするものだと思っていた。
それで最初の頃は、目と鼻の先で見つめ合ったり抱き合ったりされるのに閉口した。
でもすぐに慣れちゃって、男が香水つけてナヨナヨしててメロメロするのもいいもんだなあと思うようになった。

彼らといると、男といても女といても決して現れなかったであろう、自分の知らない持ち味というものがでてきた。
「あれ?おれ、こんな具合にも心が動くんだ...こんな風な身振りもできたんだ...へえ...」といった具合だ。
それで、人間の幅というものが、ちょっぴり広がっていくような感じがした。

その数年後、パリに住み始めることになった時、この二人にはよく世話になった。

投稿者 azisaka : 06:08

弔花

2014年02月13日

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今月の初め、昔なじみの男がひとり死んでしまった。
なんとかとかかんとかっていう、急性の癌だそうだ。
散歩の途中、スピード出し過ぎてカーブ切り損ねた車にはねられたみたい、唐突に逝ってしまった。

最初に会ったのは、小3か小4の頃だ。
どこか都会の方から転校してきたそいつは、はじめて会ったとき、ベージュの半ズボンを穿いていた。
ひとむかし前の小坊なので、脳みそのどこにも”ベージュ”なんて言葉はないんだけど、今思い返すと、たしかにそれはそんな色で、とても新鮮だった。
茶や紺やへんてこな緑色のズボン穿いてるおれらの目には、それはキラーン!と輝いていて、とてつもなくまばゆかった。
その上そいつは、今まで会った事ない感じ、なんというか...肉厚な感じだった。
ランドセルをからったジョン・トラボルタとでもいった趣だ。

誕生会かなにかで家へ呼ばれて行くとそこは、ちょっと坂を登ったとこにあった。
日当りが良く、自分ちに比べ庭が広く明るく、すらっとすました感じだった。
そんなとこも、なんとなくトラボルタだった。

小学校の時はけっこう一緒に遊んだという気がする。
中学では、たまに会うくらい。
高校になって気付くといつの間にか、なんだか苦手な存在になっていた。

だって、全校集会なんかで体育館とかに行くと、何でか知らん、どこからか駆けて来ていきなり太ももに膝蹴りしてきたり、「こうじ、おまえ~のこと好きっちゃろー、へへへ」とからかってきたりするのだ。
一番いやだったのは、わけのわからないナンクセつけて困らせようとしてくることで、高校卒業して、会う機会がなくなるとほっとした。

それで何十年も会わなかった。
数年前、個展をやってたら、会場にはいない時、共通の友人が、そいつから聞いたのだといってひょっこりやってきた。
名刺がおいてあり、その裏にそう記されていた。
おれの動向を知っていたのだ。
来てくれた友人には、懐かしくてありがたくて、とても会いたかった。
けど会えば、またそいつがこれを機に登場してきそうだった。
なので、考えた末、不義理にも連絡をとらなかった。
(ひさやん、すまなかった)

それから何年かたった今月、そいつはふいに死んでしまった。
死んだからといって、性格が変わるわけじゃない。
あいかわらず、手ぐすね引いて、こっちをからかってやろうと狙っているはずだ。
したがって、郷里に帰ってもお線香あげにいったりしないし、遺影や墓をおがんだりもしない。
これからも、今までどおり、近付かないよう用心し続ける。

そうやって、こちらから意図して遠ざけてる間は、彼はしっかりと存在している。

いつもどこかで、「いつ駆け寄って行って膝蹴りかましてやろうか」とたくらんで、その大きな目を輝かせている。
その気配を感じることができる。

彼の、自分に対する、風変わりな好意をずっと感じていられる。


「どうでもよいことは流行に従い、 重大なことは道徳に従い、 芸術のことは自分に従う」
とは、映画監督の小津安二郎が言い残した言葉だ。
それに習い、我が身に照らして言うのなら、
「どうでもよいことと重大なことは自分に従い、芸術のことは自分以外のあらゆるものに従う」

芸術のことは今回はさておき、残りのふたつについてだが、まず、今の世の中、どうでもよいことと重大なことの見分けがつきにくい。
どうでもよいことがある日、重大なことになってるし、その逆も多い。
さらに道徳がまるで流行みたいに移り変わっちゃったりするので、何に従おうかと、目はキョロキョロ、キーボードはカタカタ、とっても大変だ。
思考は停止しちゃって、気がついたら、イェルサレムのアイヒマンみたいになってしまってる。
そんなわけで、どうでもよいことも重大なことも日頃から、自分に従う、自身の頭で考えて行動するっていうのを心がけておく。

人の死っていうのは当然、重大なことだ。
だから迷わず自分に従う。
自分なりの方法で先に逝った人間を弔う。
ある時は先人たちのように儀礼を粛々と行うだろうし、ある時は以前からの身振りを変らずに続ける。
今回は後者だ。
「線香もあげに来ないで、なんて冷たいやつなんだ..」とか「遺族の悲しみを考えたら、こんな文章書くなんて許せない...」とか、そういう他人の目は気にしない。
ムっちゃんみたいに気にしない。

ムっちゃんって誰やねん?
というと、「異邦人」のムルソーのことだ。

ーーーーー


ドスッ!

あいたーっ!
ううう、やっぱりおまえ、隠れとったねーっ

うひゃはははは...
こうじ、なん偉そうに俺のこと書きよっとや!?

よかやっか、いい機会っちゃけん

なーんやそい
小津とかアイヒマンとか...だいたいアイヒマンとかいうても誰もわからんやろが、かっちょぶんなよねーっ!

よかやっか、わからんやったら調べるやろが!

おいんこと書くなら、トランペットがうまかとか、なかなかハンサムやったとか、そがんことば書けよねーっ

よかやっか、うるさかねーっ

うるさかとは、おまえやっかーっ

なんてーっ!

あ、おらんくなった...


でも...またどうせ来るやろ...

投稿者 azisaka : 20:58

マンガ傑作選その116

2014年02月07日

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ぼくらが、ふき味噌なんかで熱燗飲んだりすると「くうーっ、日本人に生まれてよかったーっ」と心底思うように、彼の地の人はニシンの塩漬けなんかでウォッカ飲むと「くうーっ、ロシア人に生まれてよかったーっ」と思うんですよね、きっと。
世の中がどんどんグロバルグロバルしてったら、世界中の人が一様にフライドチキン食べながらビール飲んで「くーっ、地球に生まれてよかったーっ」っと目を細めたりするようになるんかな...
そしたらその時ジョンは、どんな歌を口ずさんでいるんだろか...

投稿者 azisaka : 12:29

今日の絵、その33

2014年02月02日

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リカは夏休み。パパとふたり、羽田から九州のおばあちゃんちへと飛ぶ飛行機の中だ。
離陸したあと少しうたたねして、気がついたらパンツの中、何か変な心地がする。
「あれ?さっきソフトクリーム一気に食べたのが良くなかったかな?お腹こわして、寝てる間にもらしちゃった?」
「やだなぁ、はずかしいなぁ、あたしもう小6なのに...」

そう思いながらトイレに行って、パンツおろして見たら、まあ、びっくり!
真っ赤...
「わあ...アレかぁ...なにも、空の上で最初に来なくったっていいのになあ...」

パパには言いたくない。スチワーデスの姉さんにはなおさらだ。
それで、おばあちゃんちまで何とかがまんすることにして、トイレットペーパーで応急処置をした。
「席に戻ったら買って来たマンガ読んで気分転換しよう...」

けど、リカは座るなり、なんだかとってもけだるくて、うとうと...寝入ってしまった。
夢を見た。
すこしお姉さんになった自分がでてきた。
今よりずっと長い髪...なぜだか裸ん坊で、ドクロのペンダントをして立っている。
そして周りには、一面、
紅い花...

と、いう感じの絵です今回は。

ところで、「芸術新潮」1月号の、つげ義春のインタビュー、すうううううううううううううーっごく良かったですよね。
何回も何回も、繰り返し読んでしまった。
とくべつ大したことが述べられてるわけじゃない。
けど、身にしみる。
彼の近影も一枚だけぽつんと載っている。
ため息でるくらいに素敵だ。
今のこんな世の中、こんなたたずまいでおれる人もいるんだなあ,,,
芸術家とかマンガ家とかそんなんじゃなくて、ただの人間を、ただ生きているという風貌だ。

投稿者 azisaka : 21:52