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ププの生活 その28

2016年01月31日

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投稿者 azisaka : 06:43

「具体性の哲学」

2016年01月24日

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「それじゃあ、九大の箱崎キャンパス、博物館の分室の前で会いましょう」と約束して、当日そこに行ってみたら、友人から紹介された初対面のその男は20代後半。背が高く、長髪を後ろで結んで丸眼鏡をかけ、煙草ふかしながら階段の手すりに寄りかかって何やら英語で書かれた本を読んでいた。
何も知らないで通りかかったのなら「何かっこつけてるんや、こいつ」ぺっ、と唾でも吐き捨てたくなるような感じだ。
(ひどいこといってすまん)

しかし、その男、生業としているのが哲学とだということを聞いていた。
今時、実に微笑ましいはなしだ。

なので、その佇まいはこちらの期待どおり。
一目見て「うひゃひゃーっ」っとうれしくなって、いきなり声をかけた。

「よーっす!」

「あ...ども...アジサカさん?」

そうやって顔をあげたのが、上に掲げたチラシに名がある森元斎だ。

それから4、5年、背は伸びも縮みもしてないし禁煙もしてないが、床屋行く金がもったいないそうで、頭は今は丸坊主。
時々いっしょに飲みに行ったり、海水浴ではしゃいだり、バーベキューで腹一杯になったりするようになった。

さて、その彼が最近、本を出した。
「具体性の哲学」というタイトルだ。
けっこう難しいことが書いてある。
時々うまくわかんないところもある。
うまくわかんないんだけども、読み進めてしまう。
うまくわかんなくても読み進めてしまうのは、彼がなんとしても伝えたいことがあり、その熱意が伝わってくるからだろう。
あるいは、どんなことを語っていようと、それが彼自身の具体的な生活を足場として書かれているからだろう。
”具体性が大切だ”と語る、その彼の具体性が文字となって蠢き、放つ匂いや音が読む人の心を捉えるのだろう。

たとえば、その専門であるホワイトヘッドについて述べた以下の文章はこんな感じだ。

「〜現実の具体的で複雑な様は、純粋な理念だけでは捉えきれない。しかしその現実の具体的で複雑な、いわば、神秘的な様を哲学は、純粋な理念を武器にしつつも、複雑で具体的な様に寄り添いながら、じっと思考していくことがホワイトヘッドにとっての哲学なのである。〜」

あるいは「知恵と生」名付けられた文章の最後の部分はこんな感じだ。

「~人間の抽象的な知性など破壊すべき事柄である、ということだ。私たちは人間であるとともに、自然である、生である。曖昧で何が悪い。この世界は曖昧にしかできていない。複雑にしかできていない。明晰判明であればあるほど信用ならない。抽象的なものは信用ならない。~」

なんか、ざわざわ生き生きしてはいないだろうか。
ちょっぴり高いけど、買って読んでけっして損はしないぞ。
最寄りの本屋に注文しよう!

ところで、まあ、そんなこんなで、出版記念のイヴェントをやろうということになった。

「あのさ元斎、誰か対談したい人、おる?」と聞いて、すぐさま出てきたのが栗原の康さん。

きっと、すっごく面白い対談になるはずだ。
今度の土曜日、30日、19時半から!
さして重要な用事がない方、つうか用事あっても変更して、聴きに行こう!
ふたりともけっこうイイ男(+なんか変)なので、見てるだけでも楽しいぞ。

イヴェントの詳細や彼らのいかした自己紹介文は下記のとおりです。

(イヴェントの詳細)
「具体性の哲学」(森元斎著・以文社2015年12月刊)刊行記念
森元斎氏×栗原康氏ライブトーク
「アナキズムのほうへ、おもむろに」

日時:2015年1 月30日(土)19:30~21:30
場所:福岡パルコ新館6F タマリバ6
参加費:無料(定員30名)。電話予約可。
問い合わせ電話番号:092-235-7488
主催:フタバ図書福岡パルコ新館店 担当:神谷

(プロフィール)
■森 元斎(もり・もとなお)
1983年東京生まれ、ヒップホップ育ち、賢そうな奴はだいたい友達。
九州産業大学・龍谷大学非常勤講師。専門は哲学・思想史。
自称D'Angeloの生まれ変わり。
ローリン・ヒル、そしてシルヴィ・ギエムと一緒に合コンしたい。

■栗原康(くりはら・やすし)
1979年埼玉県生まれ。東北芸術工科大学非常勤講師。専門はアナキズム研究。
著書に『G8サミット体制とはなにか』(以文社)、『大杉栄伝―永遠のアナキズム』(夜光社)、『学生に賃金を』(新評論)、『はたらかないで、たらふく食べたい』(タバブックス)、『現代暴力論』(角川新書)がある。
趣味は、ビール、ドラマ観賞、詩吟。
あと、錦糸町の河内音頭が大好きだ。
「踊ること野馬のごとく、騒がしきこと山猿に異ならず」。それが人生の目標だ。


投稿者 azisaka : 08:53

COCO子 その1

2016年01月21日

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ところで、去年の春のこと、
「こうじくん、OVNIにマンガを連載しないかい?」
と、パリに住んでた時分に仲良くやってた兄貴分からメールがあった。
「おお、もちろん!」と引き受けた。

つうか、OVNIって何やねん?
OVNI(仏語で”未確認飛行物体)とういのは、フランスで発行されてる在仏日本人向けのミニコミ誌のことだ。
1974年、日本から移住してきた堀内誠一(マガジンハウスの立ち上げに携わったり、澁澤龍彦と「血と薔薇」を編集したりした伝説のグラフィックデザイナー。彼の手による「an・an」「POPEYE」「BRUTUS」「Olive」のロゴは今もなお使われてる)と、君さんとベルナールのペロー夫妻が中心となって創刊された。

最初は”いりふね・でふね”っていう名だったけど、5年後くらいにovniになった。
”兄貴分”っていうのは、その発刊当時からのメンバーで、のちに編集長を長らく務めてた佐藤の真さんのことだ。

さて、マンガはパリに住んでる日本人の女の子を主人公にすることにした。
(実は岡倉天心の末裔という設定、うふふ...)
上に載っけてるのがその第1回目で、数ヶ月遅れでこの場でもぼちぼち紹介させていただきます。

ところで、マンガを連載しはじめたので、毎月2回、今住んでる福岡は南区の家にも本誌が送られてくるようになった。
去年の年末のある日、パリで同時多発のテロが起きたあと初めての号が届いた。
きっと表紙は重々しいものになってるはず...と思って封をあけた。

「おおーっ」と歓声をあげてしまった。
”さあ出かけよう。”というタイトルで、カフェで談笑する人々の写真がでっかく掲げられていたからだ。
ううむ...さすがだぜ、この心意気。
日本に住んでる日本人も見習いたいもんだ。

OVNIは毎号、硬軟織り混ぜ、ほんとに読み応えがあります。
日本でも購読可能です。
一度web版のぞいてみてください。

OVNI


投稿者 azisaka : 08:10

豆子

2016年01月18日

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いつもは花なんて自分の店に飾ったりはしないスミレが今日、ふんぱつして色んな種類の花を買い集めてきたのには理由がある。
同じ商店街に新しくできた花屋の男に恋をしてしまったからだ。
恋をして心がどうしようもなく熱くなり息苦しくなって、はあはあ呼吸困難に陥っちゃったけど、どうして熱を冷ましたらいいのかわかんない。
悩んだあげくに、破れかぶれになって、世界の珍しい花々をあちこちから取り寄せたのだ。

惚れてしまった男の店はチューリップの専門店で、チューリップしか置いてない。
チューリップ以外の様々な花をこれ見よがしに買って束にして店に飾ってやろう。
毎夕閉店後やって来てはモカブレンドを一杯だけ注文し、黙って飲んで帰る花屋の男に見せつけてやろう。
男はきっと何かしらの言葉を発するに違いない。
スミレはそう思ったのだった。

花を専門に身過ぎ世過ぎをしているのであれば、こんなに大量のへんてこな花々を見て、無言でコーヒーだけ飲んで帰るっていうことなんてありっこない。
そうよ、そうよ、そしてあたしは彼とやっと言葉を交わすことができるのよ。

だって、聞いてくれる?
ある日彼がこの街へ姿を現し、もとタバコ屋だった空き店舗(兼住居)を買い、引越ししてきて、内外装の工事をひとりでこつこつ始めたの。
ひと月経ったくらいに完成して、店を開いたわ。
それから今日で2週間、毎日あたしの店へ顔を出すのだけれど...
いつもこんな感じなの...

(スミレ)「いらっしゃいませ」

(花屋の男)「あ、モカブレンド」

(スミレはコーヒーを入れ、花屋のもとへ運ぶ)

(スミレ)「どうぞ」

(花屋は少し頷き、20分くらいかけて文庫本読みながらそれを飲みほし、レジへと進み、また少し頷いてトレイに代金の380円ちょうどを置く)

(スミレ)「ありがとうございます」

(花屋店を出る)

つまりだ。
花屋の男は”あ、モカブレンド”という言葉だけしか、その口から発したことがない。。
スミレは、あいさつでさえない、極々ささやかな感嘆詞と名詞の連なったやつしか、彼の言葉を聞いたことがないのだ...

ええーっ、そんなことってある?
ある。

と、まあそん風な感じで今日という日がきたってぇわけだ。
早朝に一斉に花が届いて、午前中は店を休んで花を生けた。
慣れてないのでとても苦労して、どうにか見栄えがいいように生けた。
いつもはTシャツにジーンズなんだけど、服も変えた。
”あ、モカブレンド”以外の言葉を男から引き出し、叶うことなら1分以上の長いおしゃべりをするためには努力は厭わない。
洋裁やってる叔母に頼んで仕立ててもらった深緑のワンピース(豪華な花々にふさわしい)を艶やかに身にまとった。
そうして準備万端、今や遅しと彼がやって来るのを待った。

ガラガラ...
花屋のシャッターが下ろされる音が夕日に響いた。
スミレは彼がいつも座る一番奥のテーブルに花を置き、横に座り、出迎える。
店の扉が開いた。

「いらっしゃいませ」
(花屋、こちらを見る)
(5、6秒沈黙...)

「・・・あ、ジンジャーエール」

「あら、今日はモカブレンドじゃないんですか?」
「え、ええ、なんだか急に身体が火照っちゃって...喉がカラカラに...」
「そう...そんな時はジンジャーエールがいいですよね」
「うちのジンジャーエール、自家製なんですよ。知らなかったでしょ?」
「ええ、知りませんでした...」
「あたしの名前も知らないでしょう?」
「はい...あの、なんというお名前ですか?」
「スミレ...スミレよ」
「あの、春に咲く、小さな...」
「ええ、そのスミレ」

と、まあ、そんな風にしてパパとママは親しくなって結婚してあたしが生まれたってわけ。
ふたり付き合うようになったら、パパはチューリップ屋さんはやめて、今度はスミレ屋さん、スミレ専門の花屋を始めたわ。
ママは今も同じ喫茶店をやってて、パパは花屋が終わると相変わらずそこへ行く。
だけど、注文するのはモカブレンドではなくて、いつだってジンジャーエール。

パパったら、好きなもの一個きめたら、飽きもせずにそればっかりなのよね...
花だって、飲みものだって...

あ、食べ物だったら、豆腐やおからや納豆ばっかり...
とにかく大豆でできたやつが好きみたい。

だから娘に、豆子なんて名前をつけるのよ...
まあ、ちょっぴり変だけど、わたしはわりと気に入ってるわ。

そんな豆子は市内の美大に通う2年生。
課題で母の姿を描いたのが上の絵です。

そいでもってBGMはこの曲です。
Elysian Fields 「We're in love」

投稿者 azisaka : 09:58

ププの生活 その27

2016年01月15日

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投稿者 azisaka : 08:07

今年のカレンダー用に描いたのに「一年中飾っとくにはこのコ態度が横着だという気がするの...」の一言でボツになってしまって少し悲しかった絵

2016年01月08日

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ずいぶんシンプルな服を着てるんだね。

だってフリルやリボンがあちこち付いてるようじゃあ、素早い動きをする時の妨げになるじゃない。
人の目を気にしなくたっていいんなら、パンツ一枚だっていいくらいよ。

へえ、君って、他人の視線を気にするような、そんな、”長いものには巻かれろ”タイプの人間なんだ...

あら、そんなことないわよ。
あたし、自分のこの頭で考えて、こうと決めたんなら、誰がなんといおうと、人の目なんて気にしないわ。
ただ、ついこないだの出撃のとき、とっても急いでたもんで「ええーい、面倒だ、このまま行っちゃえ!」って、裸で寝てたまんま、パンツだけ履いて家を飛び出しちゃったのよね...
そしたらさ、飛び出したはいいけど、お隣の縁側で猫撫でながらうとうとしてた彦じいが、あたしのおっぱい見てびっくりしちゃってさ、驚いて跳ね起きて腰抜かして、たいへんな騒ぎになっちゃったのよ...悪い奴らは逃してしまうし...

うん、うん

だからあたし、見た人が驚かなくて、同時に動きやすくて、さらにちょっぴりかわいらしい、この木綿の白いワンピースを着ることにしたの。

ふん、ふん

つまりね、わたしが常日頃心がけてんのは、人の目を気にしないのと、人の目を気にするのと、同時にやることよ。

え、どうゆうこと?

強くて威張ってるようなやつらだとか、つるんで陰口たたいてる連中のことはぜんぜん気にしないの。
でも、弱っちくて、黙ってるような人のことは気にすんのよ。

ああ、そういうことかあ...それはなかなかいい心がけだという気がする。
そいじゃあぼくも、余計なことなんて言ったりしないで黙っとこう...

あら、あんたはいいのよ、何言ったって、恋人だから。

ええーっ、いつからーっ?

今から...そう決めたのあたし。

おい、おい、待てよいきなり。
勝手に決めないでくれよ、横暴だなあ...

横暴でいいのよ、だってあんたは男で若くて定職についてて、あたしよりもっと強いんだから。
文句があるのなら、言ってごらんなさいよ。

いえ、ないです、うれしいです。

と、まあこんなふたりが昨晩初めて一緒に行ったのは、こんなライブだ!
寒いと同時に、あったかそうだぞ。

Sigur Ros 「Olsen Olsen 」

投稿者 azisaka : 07:26

おっきなイラスト

2016年01月06日

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去年、今までで一番おっきなデジタルイラストを描いた。
(上のやつです。小さいと何が何だかあんましわかんないんだけど、新年っぽいので登場)
いろんな”もてなし”の作法からなる曼荼羅の屏風絵で、高さが2メートル、幅が6メートルくらいある。
年の末に東京ビッグサイトで行われた、さる展示会の入り口を飾るために使われた。

これを13インチのノートパソコンでやるんだから、けっこう大変で、なかなか骨が折れた。
骨が折れたっつうか、目がパシパシして、首と肩がギクギクになった。

どんなにおっきなキャンバスに一日中絵を描こうが、目も首も肩も、同じ長さ読書してるほどにも疲れやしない。
このことから考えるに、パソコン仕事はやはり身体にはあんまし良くないのだろう。

と、いうようなことを知り合いのデジタル絵描きにぼやいたら、「そんな仕事の環境じゃ、当たり前だろう」と言われた。
そんなわけで、今年はなんとかがんばって、もう少しましなデジ環境を作ろうと決意した。

投稿者 azisaka : 16:53

ププの生活 その26「大河漫画・今日のジョー吉 最終話(6)」

2016年01月01日

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投稿者 azisaka : 11:23