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マンガ傑作選その32
2012年12月31日
大学時代バイトで通ってたスナックのお客さんの大半は、美人ママ目当てにやってくる50代のサラリーマンだった。
そんなおっさん連中がカラオケで熱唱するのを聞き、話し相手になってるうちに自分が生まれる前の昭和初期の歌なんかにもちょっぴり詳しくなった。
さて、なんでうちなんかの店に通うようになったのか不思議だったんだけど、たまに来るお客さんに”うさぎちゃん”って呼ばれてる30半ばくらいのゲイの兄さんがいた。
どこに住んでんのか仕事は何してんのか”ヒ・ミ・ツ”(人差し指立てて)で、教えてくれなくて、いつもひとりでやってきては、「メケメケ」とか「愛の讃歌」とかシャンソンに日本語の歌詞をつけたのを歌っていた。
フランスびいきで自分も何度か行ったことあるらしく、パリの話をよく聞かせてくれた。
「へー、そうなん...ふーん」と、(フランスに特別興味あったわけじゃないので)適当に相づち打ちながら聞いていた。
大学卒業すると、思いがけずパリに暮らすことになった。
最初の数ヶ月、友人の家に世話になったあと、ベルヴィルっていう移民が多く住む街に落ち着いた。
聞くところによるとそこはシャンソンの歌姫、エディット・ピアフが生まれ育った場所だった。
「あ、帰ったら、うさぎちゃんに知らせなきゃ」とすぐに思った。
思ったけど、連絡先知らなかったので、しばらくすると忘れてしまった。
年末実家に帰り、ひさしぶりにテレビで歌謡曲聞いてたら、ふいに思い出した。
うさぎちゃん、どうしてるかな...
会ってすこしパリの話がしたいな。
投稿者 azisaka : 15:34
マンガ傑作選その31
2012年12月30日
うちの実家の猫はモロっていう名の15歳、なかなかのばあちゃんだ。
けど、田舎でのびのびと暮らしてるので、まだまだ若いもんと喧嘩しても負けないし、小鳥やネズミもときどきつかまえてくる。
ところでこのモロ、とってもやさしい猫でぼくなんぞはただの一度もひっかかれたことがない。
8歳になるまでは一緒に暮らしてたし、その後も帰省するたび遊ぶんだが、ほんとうに、ただの一度もだ。
それはなにもぼくだけではなく他の人に対しても同様だ。
実家に帰ってモロを抱くたび、その青く光る眼を見るたび、高校のとき読んだ松下竜一の「豆腐屋の四季」を思い出す。
以下はその中の文章で、「眼施」と題されたものだ。
「眼施(げんせ)」
病弱で、やせてっぽちで、非力で、臆病で、こんな自分がどうして世の役に立てようと、ひとり寂しい思いで殻にこもっていたある日、ぼくはこの一語に出会いました。眼施ーげんせ。仏教の経典にある無財の七施のひとつだそうです。財力もなにもない者でも、世に施すことの出来る七つのものを持っているという教えです。
七つの中でも、ぼくには眼施がいちばん心に沁みて救いでした。眼施とは柔和な目で人を見るということです。やさしさのあふれた目で人に対するということです。そんな目にあうと、人はほのぼのと心をぬくめられるはずです。つまり、ほんの少し世にいいことをしたわけです。
これなら病弱で臆病なぼくにもできるのではないか。やさしさが目にあふれるには、心にやさしさがあふれていなければなるまい。思いっきりやさしい心になろう。それ以外、ぼくなんか世の役に立てないのだから。懸命にやさしい心でいようと願いました。心がやさしさであふれてくれば、きっと目にも柔和な光がたたえられ、眼施にかなうだろうと思ったのです。
そしてぼくはハッとしました。ああ、これはすでに幼い日々、母が教えてくれようとしたことではないか。体が弱く、目に白いホシがあって、みんなから白眼となぶられ、いじめられた泣き虫のぼくに、母は一度も強い子になれとはいわず、やさしいやさしい子になれというのでした。目の星は、やさしさのしるしみたいなものなんだよ、竜一ちゃんの心がやさしければ、目の星がとても美しく光るんだよと語った、あの幼い日々の母の教えこそ眼施だったのではないか。
無学のうえ、信仰もなかった母が、眼施の教えをひとりでに会得していたのは、母自身のこのうえもなくやさしい心といつくしみの目を持っていたからでしょう。母はたぶん知っていたのです。やさしさに徹することでしか、ぼくは強くなれないのだと。
でもほんとうにやさしくなることは、なんと至難なことでしょう。ぼくは今日も、つい些細なことで妻を怒ってしまいました。ぼくより小さく弱い妻を。
(松下竜一「豆腐屋の四季」)
高校卒業し進学すると、文学部の社会学科というとこに身を置いた。
ある日、研究室の本棚の一冊(各地の市民運動を紹介した本)を手に取るとその中に、豆腐屋をやめて数十年経った”竜一ちゃん”がいた。
「おお」と思いその日から、手当たりしだいに彼の本を読んだ。
読むと彼はその若かりし頃の文章の中、「なんて至難なことでしょう」と述べたことに己が人生を捧げていた。
豊前火力発電所建設反対運動を代表とする市民運動に身を投じ、「風成の女たち」、「砦に拠る」など、”時流に屈することなく生きた誇り高き人々”をテーマとした著作を世に問うていた。
つまり、”やさしさに徹し強くなること”で、しっかりと世の中の役に立っていた。
2004年に亡くなるまでずうっとそうだった。
それは傍から見るならば、(本人はあっけらかんとしてようと)じつに身を削るような生き方で、すごいなあと心の底から思う。ほんとうに頭が下がる。
というわけで彼には勝手ながら飼い猫のモロ同様、生きるよすがのひとつとなってもらっている。
投稿者 azisaka : 17:55
新・今日の絵(その11)
2012年12月23日
「みなさん、こんにちは、わたし和服が好きで着てるわけじゃないのよ。たまたま今日はこれしか着るものがなかったの。」
「え、着付け?」
「そんなの自分でやったわよ、ええやれますとも、ちゃんと独りで。」
「で、そこで何やってるのかって?」
「そりゃあ、アジサカさんがちょっと風邪気味なのであたしが代わりに
ブログに花を添えてるのに決まってるじゃない。」
「ん?ああ、これ...やっぱり少し変?」
「でもね、この着物の柄にはなんとなく下駄じゃなくて白のゴム長がふさわしいと思ったの...それに砂浜歩いてるんだしね...」
「え?あら、そお?わたしそんなに愛想ないかしら...」
「ごめんなさいね、そんなつもりじゃないのよ...」
「でもね、こんなに夕日がきれいだと、なんだか哀しくなっちゃって...」
投稿者 azisaka : 21:16
マンガ傑作選その30
2012年12月22日
木枯らし吹く季節になると俄然、あったかい煮物や汁物を食べる回数がいや増す。
それで、昆布と干し椎茸といりこの消費率が高くなる。
長崎住んでた頃は近所に昆布専門店があったので、そこでいつも買っていた。
通りがけに店の中をのぞき、運が良ければ奥の棚の上、上等な利尻産の”不揃い切れっ端”が小さな袋詰めにされてこっそり並べてある。
いつだってあるというわけではないので、見つけるとそりゃあうれしかった。
サービス価格でひとり2袋までのその昆布を買いためておいて使っていた。
あれは、うまい出しがよく出てた。
ところで、ここの昆布店の家族は全員、顔立ちが昆布に似ていた。
「そういわれたってなぁ、ちょっと想像がつかんなあ...」
と思われる方が大半だろう。
ふふふ、残念だなあ...
ほんっとに、見たら納得するんだけどなあ。
まるで昆布の化身みたいなんだ。
投稿者 azisaka : 09:52
マンガ傑作選その29
2012年12月21日
今回、上の会議では、”ペン”だけが仲間はずれなんですけど、ペンと聞いたらすぐさま4人思い出します。
アーヴィング・ペン
アーサー・ペン
ショーン・ペン
BJ・ペン
アーヴィングはでかい写真集一冊持ってて、アーサーは「俺たちに明日はない」2回半見て、ショーンは「ミステリック・リバー」に出てたとき、おお凄いと思った。
でも一番親近感があるのは、BJです。
顔とたたずまいがいい。
ショーンと違って鯨もりもり食べそうだし...
投稿者 azisaka : 07:13
マンガ傑作選その28
2012年12月20日
実は、この坊主頭の小僧が前回紹介したつむじ風のツム五郎の少年時代の姿です。
投稿者 azisaka : 05:06
新・今日の絵(その10)
2012年12月19日
はい、ピー子ちゃんシリーズ最新作は、つむじ風のつむ五郎、愛称ツムちゃんです。
校舎やガードレールなんかに落書きするときのサインは”26”(ツー、む)、ここら辺りの不良のリーダーやってます。
得意技は頭突きと、小鳥のさえずり落とし。
頭突きはともかく、小鳥のさえずり落としってのはどんな技かっていうと、目にもとまらぬ早技なのでだれも見たことありません。
ただ、この技を受けノックアウトされちまった番長連中の証言によると、誰しもが突然強い衝撃を脳天にくらって倒れる時”チチチ...”とか”ピヨピヨピヨ...”といった類いの小鳥の鳴き声を聞くそうです。
で、胸からぶらぶらぶら下げているのは、マロちゃんです。
「で、マロちゃん、何やってんの?」
「ツムちゃんの首からぶらさがってんだっ」
「そんなこと、見りゃあわかるよ...」
「だったら聞かないでよっ」
「そうじゃなくて、仕事は何やってるのかってことさ」
「だから、仕事はこれだよ」
「え、そんなんで、お給料もらえるのかい?」
「そんなんでって...ずっとこのポーズでいるのってなかなか難しいんだぜ」
「で、でもさ、それで何がどうなるの...」
「...ったく、ぼくのこと良く見てみなようっ」
「.....」
「どうだい?」
「あ、なんかほんのちょっぴり元気になった。」
「だろ?それがぼくの仕事さ」
そんなツムとマロのコンビが最近よく聞いてるのがフランスのバンド、SOMAです。
10年くらい地道にひたすらイブ活動やり続け、2年前にアルバムデビュー。
もういい年のおっさんで、かっちょいいです。
セカンドの最後にはいってる「Mourning Cain 」っていう静かな曲がすっごくいいんですけど、それ見つかんなかったので、別の曲。
投稿者 azisaka : 05:51
マンガ傑作選その27
2012年12月18日
「タイガー&バニー」とか「夏目友人帳」とか「侵略!イカ娘」など、周りのアニメ好きが勧めるものは一応見てみる。
だけど、たいていは当のアニメより、それについて熱く語る人間のその語りっぷりの方が数段面白い。
投稿者 azisaka : 07:17
マンガ傑作選その26
2012年12月16日
小学生のとき友達と”合体ことわざ作り”ってのをやって遊んだ記憶がある。
たとえば、こんなやつだ。
「棚からぼた餅は餅屋」
思いがけない幸運をつかむには専門家に任せよう
「人間万事塞翁が馬の耳に念仏」
人の幸福は変転して定まりがないと思ってる人に何を云っても無駄である
「言わぬが花より団子」
ためらわず好き勝手言ってしまおう
と、こんなことやってたのはきっと仮面ライダーに出てくる怪人たちの影響だったのではないかと思う。
動物二つを合体させたゲルショッカーのサソリトカゲスだとかネコヤモリ、あるいは動物と金物を合体させたデストロンのハサミジャガーやハンマークラゲ...
毎週毎週、次々にいかしたやつらが登場してきてはガキんちょ共の心をキュルルンときめかせた。
そしてこれら怪人たちの”とりあえずそこらへんにあるもの、いっしょにくっつけちゃった”というような、へんてこだがしかし味わい深いたたずまいが、彼らに熱中する子供らにいわば”合体心”というようなものを育んだのだ。
つまり知らないうち体内に、ものつくりにとってはとっても大切な”ブリコラージュ”(寄せ集めて自分で作る)の精神みたいなもんが養われていたように思う。
レヴィ=ストロース(おお!)読んでもそれが”わかる”だけだが、仮面ライダー見るとそれが”できる”ようになる(うまいへたはあるけどさ)ってのがすばらしいぞ。
ところで、仮面ライダーV3の敵、デストロンの大幹部のひとりにキバ男爵がいる。
その役をやっていたのは、宍戸錠の弟で俳優の郷鍈治だ。
郷はそのキバ男爵に扮した年、1973年に宍戸の紹介でちあきなおみと知り合う。
前年に「喝采」でレコード大賞とってる大スターと、デストロンの怪人。
ふたりは恋に落ち、5年後に結婚する。
1992年、55歳の時、郷は肺がんで死んでしまうのだが、ちあきはその柩にしがみつき「私も一緒に焼いて」と号泣したという。
そしてよく知られているように、その後は芸能界から身を引いて公の場には一切姿を現していない。
キバ男爵って、いったいどれほどいい男だったのだろう...
今回の曲
Serge Gainsbourg「Je suis venue te dire que je m'en vais 」
直訳すると「君に別れを告げに来た」という曲で、終盤ジェーン・バーキンのすすり泣く声が入っている。
投稿者 azisaka : 22:56
新・今日の絵(その9)
2012年12月14日
例年のごとく、ブティックやってる友人から来年のカレンダーの絵を頼まれた。
それで描き上がったのが上の絵だ。
さっそく写真にとってメールで送った。
が、なかなか返事が来ない。
返事が来ないっていうのは、つまり、気に入らなかったということだ。
四半世紀も前からつき合っている仲なので、そんなことはわかる。
その”気に入らなさ”をどうやってうまく伝えようかと考えあぐねて、
なかなか返事ができないでいるのだ。
おそらくは
「こーちゃん、うーん、すごく素敵なんだけどさー、なにしろ一年中貼っとかんといかんやろー。それにしてはさー、ちょと寂しすぎる感じ...って私は思うんよねー」
といった心持ちに違いない。
それで、とっとと描きなおすことにした。
投稿者 azisaka : 21:10
マンガ傑作選その25
2012年12月13日
今年の夏のことだ。
駅まで迎えに来ようと父がいうのを断って、
町の様子を見ながら歩いて帰った。
正月に帰省したきりなので実家に帰るのは半年ぶりだ。
「ただいまー」と玄関開けても返事がないのでおかしいなと思ってたら、奥から受話器片手に母がぱたぱたやってきた。
「あらー、そう、お宅も大変ねーっ」なんて話し続けながら、
靴を脱いでる息子の背中をばんばんとたたいた。
強い日差しの中、大きなリュック背負って歩き汗べっとりだったので、
二階に荷物を下ろすと早速シャワーを浴びた。
ついでに濡れた下着や靴下も洗濯した。
干してたら、ぐーとお腹がなって、朝からなんにも食べてなかったのを思い出した。
帰省前にやりかけ仕事を片付けようと早起きして働き始め、終ったらそのまま電車に乗ってしまったからだ。
冷蔵庫開けたら、ゴーヤと茄子とトマトとしめじがあったので、パスタをゆで始めた。
フライパンにオリーブオイルしいてニンニクで香りをつけ、野菜炒めて塩こしょうして、ちょこっとケチャップを加えて麺に絡めて食べた。
うまかった。
食べたら食器洗って、コーヒー入れて、新聞を読んだ。
コーヒー飲み終って、新聞とそれから折り込み広告も読み終わって、
隣の客間を覗いたら、母はまだ電話でおしゃべりの最中だった。
「おおーっ、長っ...相変わらず、すごいなあーっ...」
ひとしきり感心した。
投稿者 azisaka : 22:11
マンガ傑作選その24
2012年12月12日
サラリーマンを題材にしたマンガの依頼が
しばしば舞い込んできます。
会社勤めしたことないので想像して描くんですが、
なかなか楽しいです。
投稿者 azisaka : 21:20
マンガ傑作選その23
2012年12月11日
いつどこで聞いたか読んだか忘れちゃったんでまったく正確ではないけれど、
「よくよく注意して眼を凝らさない限りわからない、背景の隅っこにあるような事物の細部までキチンと描いてらっしゃるのがほんとうに凄いですね」
と驚嘆するインタビュアーに向かって、
宮崎駿がめんどくさそうに
「あっ、そんなのは当たり前です。見えないような細部でも、そこにちょっとでも手を抜いちゃうと、必ず見えてる全体がだめになっちゃいますから」
というようなことを答えてて、ひょえーっと唸った憶えがある。
投稿者 azisaka : 18:26
新・今日の絵(その8)
2012年12月07日
引き続き「うん、わかったよピー子」シリーズ。
その7に登場は、野母埼シュエット八郎太です。
略してシュッ八、いったい何がわかったというんでしょうか?
その1)殴るなら担任より校長
その2)襲うんならコンビニより銀行
その3)使うのなら鉄パイプより己が拳
その4)行くのなら独りより仲間と
その5)歌うならバンプよりフィッシュマンズ
その6)おやつはグリコよりカバヤ
その7)酒は吟醸酒より純米酒
その8)雪道に素足は冷た過ぎ
その9)小鳥の吐く息もあたたかい
(答え)ピー子にはかなわない
投稿者 azisaka : 07:22
新・今日の絵(その7)
2012年12月06日
「うん、わかったよピー子」シリーズ、その6です。
投稿者 azisaka : 20:46
マンガ傑作選その22
2012年12月04日
私事ですが葡萄も武道も大好きです。
投稿者 azisaka : 21:18