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新・今日の絵(その6)

2012年11月29日

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今回の絵は「うん、わかったよピー子」シリーズ、その5です。

投稿者 azisaka : 05:14

マンガ傑作選その21

2012年11月28日

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「さようならの大仏」とか、「ごきげんよう緑素」とか、「ごめんなさい条秀樹」とか、小学校の頃はよく言っていたもんだ。

あと、ドッジボールの時、どういうわけか授業で習いたての言葉を叫びながらボールを投げるってのも流行っていた。
長けりゃ長いほど、難しけりゃ難しいほど威力があった。
「基本的人権の尊重ぉーっ!」と叫びながら投げると、ボールを受けた相手が今度は「平等院鳳凰堂ぅーっ!」とか「石綿付き金網ぃーっ!」とか叫んで投げ返した。

ところで小3のとき生徒会に出たら、何についてか忘れちゃったけど会議があった。
一人ひとり意見を言うことになり、自分の番がきたので立ち上がり、なんたらかんたら適当に言って座った。

と、同学年の利発と呼び声高い女子の〇〇が手を挙げて
「アジサカ君、もう少しグタイテキに言ってください」
と言った。

グタイテキーっ???

な、なんだろう、グタイテキって?

その時、”具体的”って言葉が何を意味するのか知らなかったので、
びっくりした。

あわわわ....と面食らい冷や汗を流しているか弱い10歳の少年を、
〇〇が正面から睨みつける。

校庭側の窓を背にした彼女のおかっぱ頭が、真っ黒なシルエットになり凄く恐ろしかった。

中学になる頃にはキャッカンテキに見ておれのほうが〇〇より勉強できるようになったけど、
その時感じた恐ろしさってのはいつまでも変わらない。

というわけで、小3のその放課後以来、
おかっぱ頭の女子には用心することにしている。

投稿者 azisaka : 06:37

新・今日の絵(その5)

2012年11月25日

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えっと、今回は和風シリーズその3、もっちーの登場です。
で、いきなり問題。
なんでこのコはみんなから”もっちー”って呼ばれてるんでしょうか?
1)本名、若木茂千子だから。
2)年がら年中、男子にモテモテだから。
3)老舗の餅屋の娘だから。
4)「もっちー!(もちろん!)」というのが口癖だから。
5)道子という名で元々”みっちー”と呼ばれてたのが訛った。

答えは、みなさんの裁量ににおまかせするとして、もっちー、
今日はご機嫌斜め、っていうかほぼ垂直くらいにプンプンです。

だって、さあ肋骨君(変な名ですが彼氏のことです)と、盆祭りにいこうと一年ぶりに箪笥から浴衣を取り出して着てみたところ、ちんちろりんだったのです。

もっちー、幼馴染みに言いくるめられてバスケ部になんて入っちまったのがいけなかった。
一年でなんと16.5センチも背が伸びてしまったのです。

猛烈な怒りの矛先は当然ながらその幼馴染み、浦木リカに向けられてます。
幸か不幸かリカんちは、肋骨君の家に行く途中(上の絵を見ていただくと、路上表記のスクールゾーンの”ク”の辺り)なので、一発蹴りでもお見舞いして憂さを晴らし、にこやかな気分で彼氏とお祭り気分を満喫しようという心づもりです。


勝手知ったるリカんち、庭先のピョートル5世(あ、犬です)に挨拶すると、縁側から上がって2階にあるリカの部屋へ向かいます。

がちゃっ、かたっ、ん?
ドアを開けようとしましたが鍵がかかってて開きません。
「リカぁ、おやつ持ってきたわよーっ」
もっちーは、リカ母の声色をまねて呼びかけます。
(実はもっちー、ものまねが大得意。なので”ものまね”の”も”をとって”もっちー”というわけです)

「はーい」
リカの声がして、がちゃり、
扉が開きます。

「あーっ!もっちー!」
とリカが叫ぶのと
「あーっ!肋骨君!」
ともっちーが叫ぶのが同時。

な、な、なんと肋骨君がリカの部屋にいたのでしたーっ!
げ、激ヤバ...

と、その時かかるのがこの曲!

Plastiscines「Pas Avec Toi 」

投稿者 azisaka : 21:26

マンガ傑作選その20

2012年11月23日

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な、な、なんて、いびつな顔と身体なんだ。
と、そう思った。
フランスの俳優ジェラール・ドパルデューを最初にスクリーンの中で見た時だ。
その印象ってのは奈良は興福寺にある仏像、竜燈鬼を最初見たときの印象に似ていた。
いつもは四天王とかに踏まれて「うぎゃあ」と悲鳴をあげてる邪鬼、その邪鬼がすっくと立って燈籠を頭に乗せてる一風変わった鎌倉時代の仏像だ。
いいやつなのか悪いやつなのか勇ましいのかひ弱なのか、怒ってんのか笑ってんのか、よくわからない。
が、ただただ、とてつもない存在感がる。
「おおー・れぇー・は・こ・こ・にぃー・いー・るうっ!」って光を放っている。

彼が出てたその映画っていうのは、大学時代に見に行った、「愛と宿命の泉」(うう、なんちゅう邦題...)というフランス映画だ。
大河ロマンと銘打ち街に貼られたポスター、その中にすっくと立つエマニュエル・ベアールの可憐さに惹かれてチケットを買った。

前後編あわせて、4時間にもおよぶ超大作だったが、見応え充分でまったく退屈しなかった。
イヴ・モンタンにダニエル・オートゥイユ、蒼々たる役者たちが好演し、エマニュエルはため息がでるほど美しかった。
が、どうしたことか見終わったならば、鼻がでかくてずんぐりむっくりの、ひとりの俳優の姿ばかりが眼に焼き付いてしまった。

縁あってそれから数年してパリに住み始めることになり、以降、この人が出る映画をいくつも見た。
出演作が多いので、それとは知らずブラウン管やスクリーンの前に座ってても、ぬうっと彼が登場するのだ。

どんな映画でどんな役をしてもよかった。
浮浪者でも大金持ちでも、もてない男でもジゴロでも、殺し屋でも酪農家でも、被り物したマンガのキャラクターでも、何やっても足に地がしかと着いていた。
ハリウッドの演技派といわれる名優たちの、「どぉーですぅ、うまいでしょーっ、わたし」ていうもったいぶった立ち回りがとても苦手なんだけど、この人のはそんなんではなかった。
”演技してる”っていう感じが微塵もなく、そこにそんな人が現にいるみたいなのだ。

たぶん、ほんとうの”役者バカ”なんだろうと思う。
年がら年中、寝ても覚めても頭の中にあるのはそのことばかり。
酒場でチンピラにからまれ殴られ鼻血を出した上、なおも袋だたきにあいながら、「おお、こいつの罵倒の仕方、蹴り方はいいな」とか「さっきの俺のゴミ箱つかんでひっくり返る倒れる方、これは良かった、次の芝居の時につかえるぞ」とか、あばら骨の2.3本にヒビが入ってそうなのにもかかわらず、役作りのアイディアが浮かび喜んでニヤリとするようなタイプだ。

ケンカも女も家庭も、何でもかんでも芸の肥やしにするような、本邦でいうところの勝新太郎みたいなとんでもない男だ。

観客として見てる分にはそんな芸能人がいたらありがたいが、そんなのを自分の父として持ったらいささか大変だ。

いささかどころか、たぶんとっても大変だ。


ある日、カラックス待望の新作が封切られたのでさっそく見に行ったら、なんとそのドパルデューの息子っていうのが出ていた。
カトリーヌ・ドヌーブと親と子を演じたんだけど、若いのに浮ついた感じがなく、しっとり繊細で、一目で好きになった。

とりわけ、陰影のある額と少し曇った声色がよかった。

フランス人なら誰でも知ってる芸能人(それもとんでもない)である父親(さらに母も女優)の元に生まれたおかげで(むろん皆がそうとはかぎらないけど)、窃盗やドラッグなど非行にはしり、しばしば警察のやっかいになるなど、なかなか大変な少年期を送ったみたいだ。
その味わった苦渋が、存在にある種の深みを醸していたのだろう。

それ以来、彼、ギョーム・ドパルデューの映画を注意して見ることになった。

後で知ったんだけど、彼は俳優としてデビューして間もなく24歳頃にバイク事故にあっている。
さらその入院中、黄色ブドウ球菌による院内感染に見舞われた。

何回も手術して懸命にリハビリやりながら俳優業を続けてたそうで、カラックスの映画「ポーラX」に出たのはそんな時分だ。

数年後、32歳の時には治療の甲斐なく右足を切断することになってしまう。

なってしまうが、それでも義足を着け、彼は俳優業を続ける。
映画で見ても義足っていうのはちっともわからない、
ますます、顔つきに、声に、演技に味がでてくる。
すごいなあ、父親にぜんぜん負けとらんぞ、と思った。


日本に帰って来てしばらくして在日のフランス人友達と飲んでたら、たまたま彼の話になった。
「ギョーム、いいよねー、俺、あいつ好きっちゃんねーっ」
と話してたら、その友人が「死んじゃったけどなー」と言ったので、びっくりした。

2008年、撮影中のルーマニアで急性肺炎にかかってしまったのだ。
37歳だった。

ドパルデュー親子の間には相当に大きな確執があったという。
世界的に知名度のあがった「ポーラX」の頃は、それがしばしばマスコミに取りざたされていた。

ギョームは子供時代、仕事でほとんど家にいなかった父について
「とにかく、必要な時そばにいてほしかった」とコメントしてる。


必要な時そばにいなかった父親のジェラール、
彼は息子の葬儀のとき、以下の文章を読み上げた。
「星の王子さま」の一節だ。

Cette nuit-là je ne le vis pas se mettre en route.
Il s'était évadé sans bruit.
Quand je réussis à le rejoindre il marchait décidé, d'un pas rapide.
Il me dit seulement: Ah! tu es là...
Et il me prit par la main. Mais il se tourmenta encore

Tu comprends. C'est trop loin.
Je ne peux pas emporter ce corps-là.
C'est trop lourd.

その夜、私は彼が出発したことに気がつかなかった。
彼は物音ひとつたてずに去っていった。
私がようやく追いついた時、彼は毅然とした表情で足早に歩いていた。
彼は、私にこう言っただけだった。
「あぁ!来てくれたんだ…」 
彼は私の手を取った。だが、それでもまだ不安げだった。

わかってくれるよね。遠すぎるんだ。
ぼく、とてもこのからだを持ってけないよ。
重すぎるんだもの。

今回の曲
Julie Depardieu「Born To Be Alive」

ギョームは妹を後に残した。
女優のジュリー・ドパルデューだ。
今も現役で活躍している。
彼女が「ポルターゲイ」っていう映画の中でうたった歌が、とってもいい。
勝手ながら、この冬のテーマ曲だ。

投稿者 azisaka : 14:52

マンガ傑作選その19

2012年11月20日

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寒くなってくると、あったかいスープや汁ものが食べたくなる。
パンと豆乳と果物だった朝ご飯が、パンとポタージュと果物になる。

朝起きたら、かぼちゃとかさつまいもとかブロッコリーなんかを圧料釜で蒸す。
別の鍋を火にかけ(余裕あるときは玉葱いためてから)豆乳と蒸しあがった野菜を入れる。
塩胡椒と、クミンとかシナモンとかの香辛料で味付けしてミキサーにかけるたらできあがりだ。
15分くらいしかかからない。

「って、15分あったら暖かい布団で寝てて、クノールの粉末スープ飲むわよーっ!」
「つうか、ちんたら朝ご飯食べてる暇ねーよ、おれら!」

まあ、人はそれぞれだ。

とにかく春先、クレソンが出回り、緑の濃いポタージュ作るようになるくらいまで、うちではそんな朝食が続く。
(あ、週に1、2回、和食もあり)

投稿者 azisaka : 20:28

新・今日の絵(その4)

2012年11月17日

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和風シリーズその2。
今回登場は大学2年の近松海乃さんです。
専攻は物理学で熱力学ってのをやってます。
”重力は存在しない”ってのを証明してノーベル賞とろうと目論んでます。

目論んでますが、目下の最重要課題は、先週大げんかしてしまった恋人の感太郎くんと仲直りすることです。
夏休み、青春18切符で2週間、一緒に日本縦断しようと半年前から計画してたのに、ほぉーんのささいなことから言い争いに...
彼に平手打ちをかました上、そのままぷいと実家に帰って来てしまいました。

海乃さん、実は、ひゃくぱー自分が悪いんだってこと承知してるんですが、ひじょうに勝ち気なのでぜーったい、自分からは謝りたくありません。

ひええーっやな感じ...

ま、とにかくそういうわけで、何とか感太郎くんの方から連絡をとってくるように仕向けようと、縁側で策略を練っているところです。

作戦
その1)共通の友人である焼き鳥屋の鳩子(友人つうか海乃の手下)
    に彼を説得させる。
その2)二階から飛び降りて中と大の間くらいの怪我をする。
その3)親が決めた縁談話がうまく進んでるという噂を流す。
その4)...えっと、その4....えっと...

半日座ってあれこれ思案したのに、作戦3つだけしか思いつきません。
その3つにしたって、そう大きな効果は期待できそうにないし...


そうね...
やっぱ「ごめん」って云おう...

と思ったところを描いたのが上の絵です。

曲は
Jesus & Mary Chain with Hope Sandoval 「Sometimes Always」

当時、ギター弾いてる兄ちゃんのウィリアムとホープ・サンドヴァルは恋人同士。
曲の最後、ホープがウイリアムの方をちょっぴり振り返るとこが、「くううーっ、もーっ、好きにしてっ」って感じでいいですよねっ。

投稿者 azisaka : 07:33

マンガ傑作選その18

2012年11月16日

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小学校時分、校区内にはいくつかのたこ焼き屋さんがあった。

むろんチェーン店なんかじゃないので、それぞれに特徴があった。
タコなんてたまにしか入っていないソース味の丸い単なる小麦粉の固まりみたいなものもあれば、水気が少なくやたら身が詰まってて3個も食べれば腹がいっぱいになるようなものもあった。
気分や懐具合によって店を変えたんだけど、それぞれにうまかった。

たこ焼きが多様であるのと同様、焼いてる人間も店構えも様々で個性があった。
老いた夫婦が自宅の軒先でひっそりやってるようなものもあれば、
赤くて大きなのぼりをはためかせ、威勢よく呼び込みをしてるようなとこもあった。

もっともよく通ったのは細い水路みたいな川の袂、今は不動産屋のビルが建ってるところにあった店だ。
”たこ焼き”としか看板が出てなかったので、ぼくらは”キング”と勝手に呼んでいた。

小さなプレハブ小屋で、中には簡素な調理場とカウンター、テーブルが一個に椅子が数脚おいてあった。
そこで30半ばぐらいの女の人がひとり、小さくて柔らかいたこ焼きを焼いていた。
座ると青色のプラスチックのコップに麦茶を入れて出してくれた。
夏場はところ天もやっていたように思う。

汗で濡れた髪が額に貼り付いてたり、胸元が近所のおばちゃんらより広く開いてたりして、妙に色っぽかった。
(10歳そこそこのガキだったので「何かこの人、もやっとした雰囲気だな...」という感じがしただけだけど)

その店に行くのには、実はたこ焼きの他にも重要な目的があった。

そこには、その名の由来である”キング”があったからだ。

キングというのは「少年キング」、マンガ雑誌のことだ。
「ジャンプ」はみんな買ってたし、「マガジン」や「サンデー」も誰かが持ってたが、「キング」毎週買ってるやつは周囲にはいなかった。
なんかちょっぴり”おとな”な感じで、小坊が熱中できる類いの読みものが少なかったからだと思う。

たこ焼き食いながらキング読んでると、時々裏口から男が入って来て、なにやらごそごそ二人で話しをしていた。
おそらくは
「おい、ちょっとばかし金...」
「あんたったら、おとついあげたばっかりじゃないの、いったい何に...」
「うるせいなあ、何に使おうがおれの勝手だろ...」
「あんた、また競輪ね...」
という風な会話がなされてたんだろう。

店の「キング」はこの男が読んだものなのだ。

もと暴走族かなんかで、きっとこの雑誌の看板読みもの、
いかした単車とバイク乗りがいっぱい出てくる”ワイルド7”が好きなのに違いなかった。


というわけで、深夜遠くの方から”ゴワンゴワン、キュウウイイイン”と暴走単車の音が聞こえてくると、無性にたこ焼きが食べたくなる。

今回の曲
Chris Spedding「Motorbikin'」

Marianne Faithfull「As Tears Go By 」(1965年)

Marianne Faithfull「As Tears Go By 」(1990年)

たこ焼きの話し書いてたら、バイク乗りの曲思い出して、ついでにバイク好きの女の子の映画思い出したので、マリアンヌ・フェイスフルの登場になりました。

投稿者 azisaka : 13:03

マンガ傑作選その18

2012年11月15日

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今回のマンガに登場の甘党3人組、パンクバンドもやってます。
まだオリジナル曲ないので以下みたいな曲をコピーしてやってます。

Swell Maps/Jowe Head「Cake Shop Girl」

投稿者 azisaka : 09:13

マンガ傑作選その17

2012年11月14日

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数年前、実家に帰省したおり、「じゃあ温泉でも行こうか」という話しになって、両親と家から3番目に近い温泉施設に行った。
(1と2を飛ばしたのはちょっぴりドライブ気分だったからだ)

雪の舞う日で、露天風呂はもう何といおうか、すーごく心地よかった。
ずっと浸かっていたかったが約束の時間になったので、父と一緒に風呂からあがった。

けれど、母は相変わらず遅い。
5分待っても来ないので「女ってやつはなあ...」と男ふたりため息付きながら、売店をぶらぶらした。

特産品コーナーを見尽くしてしまったので、キーホルダーが下がったコーナーをチェックすることにした。
見てたら変な被りものをしたキティちゃんのとなりに、”相棒”って書いてある男二人のシルエットのキーホルダーがあった。
相棒...?ああ、そういえば、映画のポスターをどっかで見たな...
たしか元々はテレビドラマだったはずだけど...
なんとキーホルダーになって、こんな場末の温泉施設で売られてるほどの人気なのか!
びっくりした。

帰りの車中、「ねえ、”相棒”ってドラマ知っとる?」っと聞いてみた。

そしたら、後部座席から母が
「あんたー、そんなんも知らんとねーっ!」
とでかい声を張り上げた。

それにつづいて
「そんなん誰でも知っとっるよーっ、人気あるとよー、あんただけたい知らんとはーっ!」
「ちょっとはテレビも見らんば、世間についていけんよーっ!」
「新聞もとっとらんし,,,」
「だいたい、今の総理大臣の名前ちゃんと言いきるとねーっ!絵ばっかり描いとってもつまらんとよーっ!」

と、矢継ぎ早にまくしたてた。
びっくりした。
(さっき温泉で遅れて出て来たのを批難されたので、きっとその報復だ...)


翌日、ちょうどテレビでその相棒とやらが放映されていたので見ることにした。

見た。
けど、あんまし面白くなかった。

水谷豊は「男たちの旅路」や「青春の殺人者」の時の、ギラついて斜に構えた若者の印象が強く心にしっかり残ってしまっている。
熱中して教師や刑事やったりしてもそれは変わらない。
紅茶とかすすってないで、リストラされてやけになり狂気に走る役とか演じてほしいなあ...と思う。

今回の曲
ゴダイゴ「想い出を君に託そう」

「青春の殺人者」のオープニング、雨のぬかるみを歩く水谷豊の歩き方が、ずっとそのまま歩き続けていてくれんかなあ、って願うくらいすばらしいんだけど、そこにかぶさる曲です。

ゴダイゴは「ガンダーラ」とか「銀河鉄道999」などポップな曲が有名だけど、ロック度高いものもとてもいいっ。
その1stアルバム「新創世紀」(「青春の殺人者」のサントラも兼ねてる)は名曲揃いで、買ってもたぶん少ししか損はしないと思います。
「男たちの旅路」も音楽はゴダイゴで、両方とも長い間の愛聴盤。
おっと、もちろん「青春の殺人者」と「太陽を盗んだ男」は必見!


投稿者 azisaka : 07:20

新・今日の絵(その3)

2012年11月09日

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和風シリーズその1、高橋みょん子ちゃんです。
みょん子ちゃんは、明日16歳、西果ての漁師町で花魁やってます。

さて今日は、そんなみょん子さんに突撃インタビューを試みました。

アジサカ(以下アジ)
「なんで今の職業に?」
みょん子(以下みょ)
「8人いる兄弟養ってくには、けっこうお金かせがなきゃならないん
 だけど、この仕事が今のあたしの能力にいちばん叶ってたの...」
「と、いってもやりはじめたのは知り合いのつてでたまたまなん
だけど...」

アジ「好きな食べものは?」
みょ「うーん、一番と言われたら、それはキャベツステーキね」
アジ「キャベツのステーキ?輪切りにしてフライパンで焼くん?」
みょ「あら知らない?じゃ、簡単に作り方、説明するわねっ」
アジ「おお、それはありがたい」
みょ「一人分だとして、まずはキャベツを縦に四分の一に切るの」
  「厚い鍋(ルクルーゼみたいなやつね)にオリーブオイル
   敷いて切ったキャベツを丸ごと表面焦げ目がつくまで焼く」
  「お好み焼きや野菜炒めする時みたい、キャベツの焦げた
   いい臭いがしてきたら、コップ一杯ほどの水を加え蓋を
   しめて蒸し焼きに」
  「火が通ったらキャベツを取り出して、同じ鍋で今度は
   千切りにしたタマネギ(小一個くらいかな)をきつね色になる
   まで炒める」
  「たまねぎ焦げたいい臭いがして来たらコップ1、2杯のお水と
   ローリエの葉2、3枚加えぐつぐつ煮て塩と胡椒で味付けして
   スープを作る」
  「4、5分していい感じになったら、さっきのキャベツの上に
   たまねぎスープをどばっとかけて出来上がり!」

アジ「おおーっ、キャベツとたまねぎの素材の味をいかしまくった、
   うまそうな料理やねーっ、早速今日家に帰ったらやってみます」

アジ「じゃあ、続いて、好きな男性のタイプは?」
みょ「タイプ?うーん...」
アジ「有名な人でいうと、どんな感じの人がいい?」
みょ「あ、それはやっぱりジョーみたいな人!」
アジ「おおーっ、ジョー、いいっ!普通の若者は遊んだり恋したり
   青春を謳歌してるってのに、ただただボクシングに打ち込む姿
   っていうのは見てて胸がぎゅうと熱くなるもんねーっ!」
みょ「ううん、違うの...そのジョーじゃないわ」
アジ「えーっ、みょんちー、古いなー、宍戸錠かー?
   でも、おれもあの人好きだなーっ」
みょ「違うわよ、あたしが好きなのは鍛冶屋のジョーよ」
アジ「え?鍛冶屋のジョー」
みょ「ええ、ディケンズの”大いなる遺産”って小説に出てくるの」
アジ「へえ...その彼のどこがいいん?」
みょ「素朴で飾らないとこ」
アジ「ふうん、それはたしかにいい。今日帰りに図書館いって
   借りて読んでみる」

アジ「えっとそれでは最後に、最近よく聞いてる曲教えてください」
みょ「あ、The XXの「Angels 」です」
アジ「ありがとうございました」
みょ「いいえ、こちらこそ」
   
    
    

投稿者 azisaka : 08:03

マンガ傑作選その16

2012年11月08日

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小中高の時は「そこにコマがあるから読むのだ」
ってな具合に少女マンガだろうが劇画だろうが、四角の枠の中に絵が描いてあって雲みたいな白いやつ浮かんでて、その中に文字が並んでるものなら何でも片っ端から読んでいた。

「忍者武芸帳」読んだ後に「キャンディ・キャンディ」読んだり(だから後年、上にあるようなマンガを描く大人になった)、「天使のはらわた」読んだ後に「サザエさん」読んだり...

おかげで夢の中で、影丸とタラちゃんが斬り合ったり、シャブを切らしたアンソニーがずぶ濡れで「名美いいーっ!」と叫んだり、村木がマスオさんとお揃いのチェックのスカートでバグパイプ吹いたり、キャンディが百姓一揆を首謀して打ち首になったりしていた。

今回の曲
ガンバの冒険ED「冒険者たちのバラード」

マンガ同様、テレビアニメも良く見てて(もう20年以上、テレビを必要としない生活だけど...)、とりわけ好きだったのが「ガンバの冒険」だった。

その最後に流れるこの曲は、授業中もドッヂボール中も小学生の小さな頭の中にとりついて離れなかった。
サビの部分はこんな感じだ。

カモメはうたう悪魔の唄を
帆柱に朝日は昇る
けれど夕日はおまえと仲間のどくろを映す

「うわーっ」
これ聞いて、ドキドキドキドキ胸が高ならなけりゃあ、しっかり生きてる小学生とはいえんやろう、やっぱ。

投稿者 azisaka : 07:13

梅ハワイ

2012年11月06日

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肌寒くなってくるといつも思い出すことが36個くらいある。
そのうちのひとつが梅おばちゃんのことだ。
親戚に梅という名の叔母がいるというわけではなく、梅の花を売る名も知らぬ初老の女のことだ。

まだ長崎は諏訪神社の脇に住んでいた時分のこと。

その年の冬はいつになく寒いうえ、ゲームソフト2本分の大量デジタルイラスト仕事(のちのち”コナミ地獄”という名で語りつがれる)で体調を著しく損ない、全く調子が悪かった。
身体はぞくぞく、頭はふらふら、眼はしぱしぱ、これっぽっちもいけてなかった。

むかしから冬には強い方だった。
そんな風に言うとまるで冬が敵みたいだけど、その逆で、この季節はいつだって頼りになる味方だった。
冷たい風で叱咤し、澄んだ青空で激励してくれる、鬼コーチみたいな存在だ。

しかしどうしたことかその年の冬は違った。
ひたすら遠ざけ、その仕打ちから身を守らねばならない、ただただ寒いだけの冬だった。
鬼コーチがいつもどおり力強く鼓舞してくれてるというのに、選手の方は心身ともに萎え、縮こまってしまっていた。

「寒い、寒い、ああ、寒い」と力なく繰り返すばかり...
絵筆がいっこうに振るわない。

こういう時、たいていの人だったら、寒い中を辛抱して働き続けなければならない。
会社や工場、学校や畑なんかがあるので、自分勝手に今いる場所を離れるわけにはいかないからだ。

しかし、こちらはひとまずは絵描きだ。
なので、望めば暖かさを求め、どこへだっていくことができる。
ロシアだろうがコンゴだろうがパナマだろうが、絵の生産地はどこであっても、誰も気にしない。

なにも、今いるとこにとどまっておる必要はないわけだ。
幸いにコナミ仕事のおかげでちょっとした貯えもある。

それで暖かさを求め、しばし南方へ逃れる事にした。
友達のいるハワイにしよう。


まずは街へガイド本を買いに行くことにした。
一番厚いコートを羽織り、でかいマフラーぐるぐる巻いて家を出る。

ひゅううううう...
「な、なんちゅう寒さやあー」
と、言おうとしたが寒さで「な、な、な..」としか出てこない。
こんな時、遠出をするもんじゃない。

神社の長い階段を下りて行くと、中島川があり、それを越えた先に商店街が広がっている。
そこにある小さな本屋さんに行くことにした。

とことことこ、石の階段を下りてゆく。
下りきると横断歩道。
横断歩道を渡るとすぐに橋。

橋の欄干に人。
ほっかむりをしたおばちゃんがひとり。

真冬というのに浅黒い頰に数本の深い皺、子犬みたいな眼、白のゴム長に野良着みたいなものを着込んでいる。
その傍ら、水色のプラスチッックのバケツの中、つぼみのついた梅の枝が約十本。
朝、山でひきちぎってきたような枝だ。
それだけを売っている。

「おばちゃん寒かとに、ようがんばらすな...(寒いのによくがんばってるなぁ)」と感心しながら通り過ぎた。


手頃なガイド本を手に入れ、夕飯の買いものして、昼ご飯にと豚まん二個買った。

もどり道、また橋にさしかかったら、さっきのおばちゃんがひざまずき、通行人に背を向けて何かごそごそやっている。
通り過ぎる時に横目でちらりと見た。
昼の弁当を食い始めているところだった。

国語辞書くらいの大きさの薄緑色のタッパー。
中には白ご飯ときんぴらごぼう。

白いご飯ときんぴらごぼうだけが同じ分量、ぎっしりと詰まっている。

と、奇妙なことが起こった,,,
弁当箱が唐突にとても強い光を放ち、周りの景色をすべて吸い込んでしまったのだ。

わわわ....

続いて畏れおののいている男の眼に、白ごはんときんぴらごぼうが一直線に飛び込んできた。
そうして一気に身体のずっと奥までもぐって行くと、あれよあれよと言う間に真っ赤な炎たてながら燃えはじめた。

おおーっ

身体、そして心がたちまちのうちに熱くなる...


「...うむ、そうだ、たらたらやってる場合ではない、
さっさと帰って豚まん食べて、ぐいぐいと絵を描こう。」

とっても不思議なんだけど、この一瞬のできごとで、冬はいつもの冬となった。

すっかり調子が良くなり、
それから春が来るまで、たくさん絵を描いた。

ハワイのガイド本は押し入れに放り込んだっきり、
開くことさえなかった。


「えーっ、アジサカさん、うそやーん、そんなことだけで一気に調子が良くなるわけないやーん!」

と、いぶかる人は、寒風に吹かれ橋の上で梅の枝を売る山から来たおばちゃん、
彼女が食べる弁当、
その白飯ときんぴらごぼうが放つ光の威力というものを知らない。

投稿者 azisaka : 08:39