« 2012年09月 | メイン | 2012年11月 »
マンガ傑作選その15
2012年10月30日
「おまえ、水に乗ってすいすい泳ぎよんね」
と、男言葉でその女の体育教師は唐突に云った。
中学2年の時だ。
いつもの強面の男教師が不在で、その日の水泳の授業は彼女が代わりに行っていたのだ。
名前忘れちゃったけど、小柄で陽に焼けプリプリで、赤い水着を着てたのでまるで金太郎みたいだった。
彼女、色気というものほとんどなかったけど、人気があった。
”頼りになる兄貴分”みたいに、正義感が強くて面倒見が良く、さっぱりしていたからだ。
その彼女が名前も知らぬ他所のクラスの男の子をなにげなく褒めた。
男の子はひじょうに嬉しかった。
「おまえ、水に乗ってすいすい泳ぎよんね」という言葉はそれ以来、彼の心の中で小さな灯りみたいに光り続けた。
高校に進学したら、その灯りをただ唯一のよすがとして水泳部に入った。
大会に出てめざましい活躍をするような選手とはなれなかったが、3年間、ただただすいすい泳いでいた。
それから数十年たったけど、今も週に3回泳いでいる。
おそらくそのせいで病気なんてほとんどしないし、メタボみたいなものとも縁遠い。
ご飯も酒もうまいし、なんといっても仕事の集中力が長く続く。
金太郎先生のひとことのおかげだ。
投稿者 azisaka : 07:53
マンガ傑作選その14
2012年10月29日
以前暮らしてたベルギーの名物料理に「うなぎのハーブ煮」っていうやつがある。
人参とかキュウリを輪切りするみたいに、うなぎを骨付きのまんまブツブツ切って、鍋にぶち込み、いろんなハーブ(と、ほうれん草)で煮た料理だ。
申し訳ないが、ちっともうまくない。
どこにいようが日常はたんたんと静かに暮らしてるので、”胸がかきむしられる”というような思いってのはあまりしない。
けど、この料理を食べた時には(訳あって3回も!)そういう思いをとっても強くした。
うううううううううう....、こんなんじゃなくって、蒲焼きにしたのが食べたいいいいいーっ!
と身体全体で乞い願い、ぶるぶると震えた。
あんまし声を大きくして自分の国を自慢するのは好まないが、うなぎの中骨を取り除き、串を打ち、素焼きした上で、さらに醤油、みりん、砂糖、酒を混ぜ合わせたタレをつけて焼く、ってのを考えだしただけで、くうう...おれらの先祖はすごいぜ、と思ってしまう。
あ、でもビールはほんとう、日本に比べあっちは桁違いにうまいです。
今回の曲
ちあきなおみ「夜へ急ぐ人」
よく知られてるように、この一曲の得体の知れない凄みで、その年の紅白歌合戦のお祭り気分は、会場もそしてお茶の間も一瞬にして吹き飛んでしまった。
「な、な、なんなんだこれは!?」
彼女が歌い終わるや開口一番、司会者の山川静夫は「なんとも気持ち悪い歌ですねぇ」と言い放ち、この年を最後に彼女の8回続いた紅白連続出場は途切れてしまう。
名ばかりの合戦の場に、彼女ただ独り真剣を持って向かっていったわけだ。
本当の戦だったら、白組も赤組も全員その手でぶった切りだ。
表現者たるもの、こうでなくちゃあならん、ってこれ見る度、気が引き締まります。
投稿者 azisaka : 08:28
マンガ傑作選その13
2012年10月28日
ここ数年、ブリュッセルに滞在してるときに決まって行く市民プールの近くにポルトガル人がやってるスイーツ屋さんがある。
スイーツっていってもキラキラしたものはさっぱりなくて、家庭で作るような素朴なものばっかりだ。
日本でいうところの古い商店街につきものの、大福やおはぎなんかを数種類売ってる小さな和菓子屋さんに近い。
毎日毎日同じものを少しだけ作って少しだけ売って、少しだけ贅沢して暮らしてる感じの店だ。
そこに日本でなじみのあるカステラの、原型みたいなお菓子が売ってある。
そりゃあうまい。
プールに行った時には必ずといっていいほど買って帰って夕食の後食べる。
日本のカステラよりきめが粗くてごさごさした食感だけど、ぱさぱさではなく、しっとりとしている。
ポルトガルといったら今年103歳、現役の映画監督マノエル・ド・オリヴェイラがいる。
60過ぎてから本格的に撮り始め、70過ぎてからはほぼ年に一作のペース。
イーストウッドもびっくりだ。
100歳の時とった映画のタイトルが「ブロンド娘は過激に美しく」っていうんだからなあ、すごいなーっ。
投稿者 azisaka : 10:15
お知らせ
2012年10月27日
ひょんなことから来月、一日だけ絵画教室みたいなものをやることになりました。
(”絵画教室”っていうより、”絵描き道場”が近いかな...)
数年前、縁あってお茶で有名な八女は星野村の小学校で5、6年生相手にやって以来です。
その時は子供たちけっこう楽しんでいましたので、今回もそこそこ面白いのではないかと思います。
今回は、年齢や国籍や前科なんかを問わずどなたでも参加できます。
もし、ご都合よろしければ気軽に参加してください。
内容は自分の好きな画材で自画像を描くというやつです。
描き終ったあと、みんなでわいわい(誰が描いたのか伏せといて)一点ずつ見ていきます。
日時は11月15日(木)17:00〜19:00
場所は福岡市中央区警固公民館
参加費は500円です。
申し込みや詳細はどうぞ以下をご覧になってください。
『かこうぜ!じぶん』
と、いうことで、
みんなまってるぜいっ!
(あ、年長の方、タメ口ですみません,,,)
投稿者 azisaka : 05:50
新・今日の絵その2
2012年10月26日
今回の絵のモデルは秋乃るる子さんです。
るる子さん今でこそ、それなりに歳もとって(といってもまだ23ですけど)しっかりと落ち着いていますが、中学生の頃は、気まぐれのわがままで名が通ってて、大事な用事をドタキャンしたり、急に部活を変わったり、頻繁にみんなを呆れさせていました。
それと同時にちょっと容姿が森に暮らすリスに似ていましたので、帰国子女の同級生に”カプリス”(Caprice=気まぐれ)いうあだ名をつけられてしまいます。
以来、学校も幾度となく代わり、年月もそこそこ経ったのですが、周囲からはずっとカプリスって呼ばれ続けてます。
今ではすっかり自分もそれに慣れちゃいました。
(実は最初っからけっこう気に入っていた)
そんなわけですので、去年から本格的にプロのダンサーとして活動を始めた時も、本名ではなくあだ名のカプリスを名乗ることにしました。
ところで余談ですが、長崎の活水女子大へと上がるオランダ坂の登り口近くに「カプリス」っていう名のカフェがあります。
ここの女主人が作る粉もの、特にベーグルとシナモンロールはほんっとうにうまいです。
さて、”カプリス”ことるる子さん、森の中で何をしてんのかといいますと、リスのまねっこして木の実をさがしているわけではありません。
森の奥にあるお屋敷を訪ねていく途中なのです。
十日ほど前、そこの主人の使いという人から電話がかかってきて、お屋敷で踊りを踊ってほしいと頼まれたのでした。
ただし着物を着て、屋敷中を使って、という依頼でした。
で踊ったのはこんな感じだったそうです。
投稿者 azisaka : 08:37
マンガ傑作選その12
2012年10月25日
今回のマンガ、お母さん、見てる映画はこれです。
バルドーはともかくピコリとドルリュー(うう、発音難しい)の音楽がとてもいいです。
投稿者 azisaka : 08:25
マンガ傑作選その11
2012年10月24日
さて今回の4コママンガについてですが、映画化するとすると、ロケ地は尾道、信行寺下踏切(”転校生”小林聡美が転げ落ちてきたとこだから)で、帽子のおじさんの役は志村喬(中折れ帽がもっとも良く似合うから)、そいでもってテーマ曲は、くるり「坂道」(踏切の音がサンプリングしてあるから)というのが希望です。
投稿者 azisaka : 07:27
マンガ傑作選その10
2012年10月23日
そう、コスモスといったら思い浮かぶのはこの曲。
大学時代のとある晩、
場所はバイト先のスナック。
開店後3時間が経過してるというのに
お客さんが来る気配は全くなし。
ママさんとふたりきり。
とても気まずい雰囲気...
トイレも床も掃除してピカピカ、
グラスは洗って拭いてキラキラ、
ボトルはきれいに並べられてパリパリ。(ちょっと変?)
他になにかする仕事ってあったっけ?
何も思いつかない。
トントントン...ママさんはカウンター叩きながらイライラした様子。
小さな店の隅々にまでたちこめる凄まじく重苦しい空気...
沈黙がしばし続く。
ああ、何か言わなくちゃ...えっと...えっと...うう...
と、そのとき有線からこの曲が!
おれ「あ、聖子ちゃん...」
「これ、聞いたことないです」
「新曲かなあ...」
ママ「なんか、しっとりしてていいねぇ...」
おれ「は、はい、いいですよね...」
ぎしぎしかさかさの空気が一転して、さらさらのふわふわに,,,
そして、なんと!
曲が終るか終らないうち扉が開き、お客さんが一組!
ママとおれ「いらっしゃいませーっ!」
氷割りながら、「ひゃー、このことはきっと何年経っても忘れんばい...」
と思いました。
で、やっぱりそのとおり忘れませんでした。
それで、この場に書いてます。
あ、でも、その時にはまさかこの曲が「チャン、チャン、チャーン、チャチャチャチャッチャチャチャッチャッチャーン」(あ、これ”ライディーン”の出だしです)の人が作ったものだとは思いもよらなかったです。
今回の曲
松田聖子「ガラスの林檎」
この頃の聖子ちゃん、ちょっとブルース・リーみたい。
投稿者 azisaka : 08:23
マンガ傑作選その9
2012年10月22日
ごくたまに地下鉄なんかで、名字に”さん”付けや、名前に”ちゃん”付けでない、あだ名や愛称で人の名を呼んでる声を耳にします。
けっこううれしくなります。
今回の曲
Mina Tindle 「To Carry Many Small Things」
フランスのFeistと(たぶん)呼ばれてるであろうMina Tindle姉様登場。
見かけは、パリの17~20区あたりの郵便局の窓口にアンニュイ顔でクロスワードパズルやりながら座ってるような姉さんです。
「あの...じゃましてごめんなさい」って感じでおそるおそる話しかけると、爪噛みながら首だけかしげて「あら、何かしら?」ってな顔でこちらを見るようなタイプです。
しかし、見かけとうらはらに歌なかなかいいです。
投稿者 azisaka : 06:51
再び今日の絵(その1)
2012年10月21日
昨日からはじまった企画展、絵箱を5つ作ってみたものの、それだけじゃあ展示するのになんとはなし寂しいよなぁ、ということで、並べた絵箱の背景にと比較的大きな絵を描きました。
それが上の絵です。
題名があるのですが、それがけっこう長いです。
むかし見た映画で、森崎東監督の「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」っていうのがあったのですが、それよりかもっと長いです。(主演は倍賞美津子でした。彼女の声、とてもいいですよね)
「あなたは、これで私をまんまと縛り付けたつもりでいるけど、それは短見というものよ。私はいつだってこのピアノ線を断ち切って逃げることができる。でもそうしないのは私がここにこうしていたいから。今のところはね」
うわ、ほんとに長っ....
今回の曲
高田渡「銭がなけりゃ」
ときどき必要にかられてこの映像を見る。
見ると安心するからだ。
かつてこのようなたたずまいの若者が存在していたということ、こんな風に小さな花みたいに笑い、吹雪の中の針葉樹みたいにすっくと立ち、野良猫みたいな眼でまっすぐに前を見てた若者がいたということ、それを確認できて心が落ち着くからだ。
天神なんか一日中歩いても、今はこんな風な若者には巡り会いはしない。
けど、数十年前にたしかに存在していたのなら、数十年後にまたあらわれる可能性がないわけじゃあない。
そんな希望をこの彼の姿、とりわけその眼は、もたらしてくれる。
しかし、ほんと、なんちゅういい目つきやあ...
以下、彼が好きだった詩人の一遍。
「猫」山之口貘
蹴つ飛ばされて
宙に舞ひ上り
人を越え
梢を越え
月をも越えて
神の座にまで届いても
落つこちるといふことのない身軽な獣
高さの限りを根から無視してしまひ
地上に降り立ちこの四つ肢で歩くんだ。
*あ、ささいなことなんですが、このサイトのトップページの絵、昨日から寒い季節用に変わりました。
投稿者 azisaka : 07:24
マンガ傑作選その8
2012年10月20日
幸いに、というかすごく幸いに、今住んでるとこには今の季節になると時折、金木犀の香りが流れ込んできます。
今回の曲
のっこ「わすれな草」
熊本大学時代、クラスの友人が「こうじ、いかしたバンドが来るんで見に行こう」と誘うので名前忘れちゃったけど地下にある小さなライブハウスに出かけて行った。
そしたら小さな女の子が元気よく飛び跳ねながら「ラヴ・イズ・Cash 」っていう歌をうたって、それはすごくいかしていた。
とても下世話な話しで恐縮なんだけど、その女の子、あんましぴょんぴょん動くものだから時々胸元からちょっぴりブラが見えた。
ロックやってるような娘達はみな黒の下着をつけてるものだと思っていたのに、それはベージュ色で、それがとても印象深かった。
数年後、また彼女らのライブを見に行った。
今度は、福岡のサンパレスというでっかい会場で、女の子の姿は遠くの方からほんの小さくしか見えなかった。
投稿者 azisaka : 06:53
久しぶりの絵箱その2
2012年10月19日
さて上の写真は明日から始まる企画展に出品する絵箱5点のうちの4点です。
「ひゃあ、アジサカさん女の子の裸ばっか...」
って、そりゃあそんな風なテーマの展覧会なんだから仕方ないです。
「和服の似合う中年展」とか「草むしりのおじいさん展」とか「ひなたぼっこの猫展」とかだったらちゃんとそんな絵を描くと思います。
今回の曲
Eddi Front 「 Gigantic 」
ブルックリン拠点の歌うたいで、来月、デビューアルバム出すそうです。
こんな感じに歌うひと、本邦にはあんましいないです。
(たぶん知らないだけなんでしょうけど...)
映像もとてもいいです。
投稿者 azisaka : 19:34
マンガ傑作選その7
2012年10月18日
団子でも饅頭でも、緑のがあったらそれにする。
よもぎがとても好物だからだ。
(時に抹茶だったりするけど、抹茶も好きなので問題なし)
以前沖縄に個展しにいったとき、ちょっとふらつきながら(連夜の泡盛飲酒のため)国際市場歩いてたらフーチバ(よもぎ)ジュースが売っていた。
「おお!」とさっそく買ってゴクゴク飲んだ。
飲んだら、血圧がいきなり高くか低くかどっちかになって、めまいがしてしゃがみこんでしまった。
そしたら店のおばちゃんが、「あらあ兄さん、これは100%フーチバだからそんなに一気に飲むもんじゃないよー」というようなことを云った。
今回の曲
ナツノムジナ「渚にて」
どんと次男ナラのドラム!
投稿者 azisaka : 09:16
マンガ傑作選その6
2012年10月17日
天高く舞い上がってしまった和服の婦人、最初のうちこそびっくり仰天して叫んだりしてたんですが、じきに落ち着いてきます。
遠方に広がる海岸を見ながら、ふと学生時代、恋人と歩いた郷里の浜辺を思い出します。
そんな彼女の心に流れて来るのがこの曲。
樹木希林の絶叫とともに登場!
投稿者 azisaka : 08:54
マンガ傑作選その5
2012年10月16日
帽子の次はヘアースタイルです。
今回の曲
Brigitte 「Ma Benz」
ブリジットはブリジットでも、バルドーでもフォンテーヌでもフォンダでもなくて、フランスの女の子二人組のミュージシャンです。
この曲、オリジナルはシュプレームNTMのヒップホップ。
探して聞きくらべてみると面白いです。
投稿者 azisaka : 20:37
マンガ傑作選その4
2012年10月15日
前回に続いて帽子シリーズ第2弾!
菅原帽の”菅原”ってのはいうまでもなく学問の神様、菅原道真のことです。
これが菅原(文太)帽だったら、ドスや拳銃、トラックの扱いがうまくなります。
今回の曲
Flobots「Handlebars 」
Flobots「Handlebars 」(PV)
最近いちばん、あわわとなった曲。
I can ride my bike with no handlebars!
(僕、手放し運転ができるんだ)
と繰り返します。
投稿者 azisaka : 17:20
マンガ傑作選その3
2012年10月14日
ちょっとだけ評判が良かったので、またまたマンガ作品の登場です。
この傑作選についてですが、過去に雑誌や新聞紙上で発表したり、あるいは描いてもボツになってしまった作品で、一年以上経過したものについて取り上げています。
今回のマンガは、もとはモノクロだったものに今回色付けしてあります。
投稿者 azisaka : 07:55
マンガ傑作選その2
2012年10月13日
今回はひとコママンガです。
投稿者 azisaka : 13:33
2012年10月13日
とても過ごしやすい季節になりました。
これ幸いと昔やったイラスト仕事の整頓をしていたら自分が描いたマンガがたくさん出てきました。
ひじょうにつまらないものもあるのですが、意外と面白いものもあります。
この場でときどき紹介していくことにしました。
今回はその第一回目です。
投稿者 azisaka : 13:31
久しぶりの絵箱
2012年10月08日
友達がやってる小さなギャラリーでグループ展があるというので、絵箱を五つ作りました。
少女をテーマとしたものということで女の子ばっかりです。
「3点出品してください」とのことだったのですが、ひさびさに箱に絵を描いてたらとても楽しく、勢い余って5点になってしまいました。
ところで、こうやって女の子ばっかり描いてると、必ずしわくちゃのじいさんや崩れかかった土塀など年季の入ったものが描きたくなります。
野菜ばっか食べてたら、カツ丼とか無性に食べたくなるのに似てます。
似てないかな...
「少女採集 vol.3」
会場 ギャラリィ亞廊
期間 2012年10月20(土)~28日(日)
期間中無休 入場無料
営業時間 13:00~19:00
投稿者 azisaka : 07:00